TRIGGER!2
 女性のそんな顔を見て、放っておける訳がない。
 それでなくても、自分はいつも、美和の歌声に癒されているのだから。


「何でも言って下さい。私はこれでも刑事の端くれですし、何か美和さんの役に立てるかも知れない」
「・・・それよ」


 ほっぺたを膨らませて、美和は風間を軽く睨む。
 風間はきょとんとして、美和を見た。


「隼人ってさ、物凄い人見知りでしょ。あたしも最初は苦労したのよ、このカタブツをどうやって料理してやろうか、って」
「料理・・・」
「そう。これでもホステスの端くれなのよ、どんなお客さんにも気軽に接してもらえるようにならなきゃ。じゃないと、信頼関係は生まれないから」


 腰に手を当てて言う美和。


「こっちは充分信頼してますが」
「いーえ、隼人はまだあたしに心を許していないわ。未だに『美和さん』なんて呼んでるし」


 あぁ、そこか。
 美和が何を言いたかったのか、ようやく分かった。
 そして苦笑して。


「信頼と呼び方は関係ないと思いますけど」
「あるわよ。あたしは隼人って呼んでるでしょ?」
「いやさすがに、呼び捨てにする訳には」
「あたしがそうして欲しいの」


 風間の言葉を遮って、美和は言った。
 その迫力に押されて、風間は。


「・・・美和」


 目の前にいる、真っ赤なドレスがよく似合う美人に、小さく言った。
 美和は、クスッと笑いーーそして。


「もう、どうしていいのか・・・」


 唇を噛み締めて、美和はカウンターの中で俯いた。


「言って下さい。少なくともこれ以上、悪くはならないでしょう?」
「そうね・・・」


 シンクに置いた手が、震えていた。
 尋常じゃないその態度に、風間は眉をひそめた。
< 102 / 206 >

この作品をシェア

pagetop