TRIGGER!2
 たった1人であの人数を制圧した峯口。
 こんな男がいたのかと、風間は信じられない気持ちだった。
 店の外に出ると、目の前には全く変わらないいつもの光景が広がっている。
 本当にこの街の連中は夜の闇が大好きな輩ばかりで、繁華街の歩道は行き交う人達でごった返している。
 風間と美和は、まやかしであるその人混みに紛れて歩く。
 というのも、美和の怪我が酷く、走るのが辛そうだからだ。


「痛みますか?」
「大丈夫」


 言いながらも、苦痛に顔を歪める美和。
 この様子では、峯口が言っていた“AGORA”があるビルまで行くのは無理がある。
 それに。


「ーー!!」


 鳴り響く発砲音。
 風間は美和を庇うように身を低くして、路地の物陰に隠れた。
 やはり、フロアにいたのは敵の全てではなかったらしい。
 敵は辺りに散らばって、不意打ちのように発砲してくる。
 人混みに紛れてこっちの姿も見つけにくくなってはいるが、こっちも相手がどこにいるのか、見つけるのは至難の業だ。
 2人はそのまま細い路地を進み、何処かの店の裏口を壊して中に入る。
 美和は呼吸も荒く、その頬に伝う血が止まらない。
 頭からの出血らしい。
 風間はポケットからハンカチを取り出すと、美和の頬を拭いた。
 同時に、強い怒りが湧いてくる。
 これが、美和が会いたがっていた『あの人』の仕打ちか。


「峯口さんから、元の世界に戻る場所を聞きました。ここから近い方に向かいます」
「・・・ふふ」


 真剣な風間に、美和は少し笑みを浮かべた。


「やっぱり頼りになるね、隼人は」
「当たり前です。これでも男ですから」
「知ってる」


 からかわないで下さい、と、風間は美和を抱き起こす。
 ここから峯口が言った、元の世界に戻るドアまでは、通りを二本またいだすぐそばだ。
 ちらりと『タイムリミット』という言葉が気になったが、このままでは美和の怪我が、命に関わって来るかも知れない。


「急ぎましょう」


 路地裏の通りを確認して、峯口が言った製造元だというテナントビルを目指す。
 時折現れる敵を討ち倒し、足がもつれそうになる美和を支えながら。
 そして、目的のビルに到着した時。


「隼人ーー」


 美和が呟く。
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