TRIGGER!2
 峯口も、そんな風間を止めようとはしなかった。
 本人が納得するまで、好きにさせておいた。
 だがその時ジョージは、そんな峯口とは真逆の行動をしたのだ。


「毎日死にそうな顔してあっちに行ってる隼人をあまりにも見てられなかったからよ、毎日無理やり飲みに連れ出したんだ。可愛いオネェちゃんがいる店にな」
「あの当時は、迷惑なだけだった」


 ジョージなりの励まし方なのだろうが、相手を選んだ方がいいと、彩香は思う。
 いくら気を紛らわしてやろうと思っていても、風間は元々女性が得意な方ではないのだ。
 それで風間はジョージに苦手意識を持っていたのか。


「まぁ正直に言えば、実際には家に引きこもるよりも気が紛れたのは確かだし、ジョージも社長も、私と同じように必死で美和を探してたのは知ってますから」
「知ってたのかよ」
「当然だ」


 風間は頷いて、真顔に戻る。


「ですが、あの美和の一件以来、黒幕の男とその組織の連中は、きれいさっぱり姿をくらましたんです。水島先生がこっちにいる以上、それから薬も出回る事はありませんでした」
「だが最近になって、連中がまた動き出した」


 風間の言葉に、ジョージが続く。
 彩香は無意識に、ゴクリと喉を鳴らした。
 水島をさらった連中は現に今、ドリームコーポレーションというあの建物の中で確かに、薬を生産しているのだ。


「あれから三年経ちます。考えられるのは、水島先生が我々の元に保護されてからも、奴らは別の場所で薬を開発し続けていた。そしてようやく、使用可能な段階になった」
「ちょっと待てよ、薬の試作品は美和が持ち出したんだし、その現品は最後に隼人に託されたんだろ?」


 彩香は疑問を口にした。
 そうです、と風間は頷いて。


「ですが三年前に美和が持ち出した前の段階の試作品が残っている可能性は十分に考えられます」


 峯口も、建設業とは違う裏の仕事でたまに水島が開発した薬を使う事があるがーーそれは水島の手によって三年前よりも遥かに改良されている筈だ。
 そして、それを使うのは、ごく限られたクライアントだけ。
 だが今回の黒幕が抱える開発者は、三年かかってようやく今の薬よりも遥かに劣る精度で量産出来る段階に辿り着いただけ、という事になる。
 それを考えただけでも、水島の頭の中が常人とはまるっきり違うのだということが想像出来る。
< 117 / 206 >

この作品をシェア

pagetop