TRIGGER!2
「俺も一応、片っ端から調べてみたんだが」


 今まで黙っていたジョージが口を開く。
 彩香から美和を見たという話を聞いて、半信半疑ながらもジョージは、当時美和が携わっていた場所に行ってみようかと、あっちの世界に出向いた。
 そこで目にした光景は。


「薬の取り引きを、あちこちで見かけた」


 ここまでは大体想像ができる。
 三年前に食い止めた事態が、今まさに動いているのだ。


「それがまた“スターダスト”の目の前だったんでな。こっち戻ってきて店に出向いたら、彩香と遭遇した訳だ」


 ジョージがあの時何故スターダストに居たのか、これで分かった。
 風間は表情を変えずに黙って聞いている。
 もうここまで来たら、非の打ち所がないくらいに、道は一直線に続いているではないか。
 今までは何本もの細い道をバラバラに歩いていたが。
 それが今、3人集まってようやく1つにまとまりつつある。


「とにかく、美和が当時付き合ってた男っつうのが、この件の黒幕なんだな?」
「その可能性は高いと思いますが・・・」


 風間は口元に手を当てて、考え込む。


「ドアの確認をしていて分かったんですが、流動型のドアの出現場所には、関連性があると思うんです」
「どう言うこと?」
「例えば、同じ人間が関わった場所とか、その人間に思い入れがある場所に多く現れる傾向があります」


 風間の推測には信憑性がある、と彩香も思った。
 薬の関連性だけで言えば、『佐久間クリニック』と『スターダスト』、それに『ドリームコーポレーション』の3つは間違いなくこれに当てはまる。
 それなんだがな、とジョージが口を開いた。


「“スターダスト”は最近できた店の割には若い奴らに人気の店だ。噂じゃ『嫌なことは全部忘れられる店』って有名らしいぜ?」


 もっとビールねぇのかよ、と、ジョージは立ち上がって冷蔵庫を探る。
 そんなジョージが言うように、これも『記憶を無くす薬』が全く関係していないとは言えない。
 佐久間の『過去そのものを忘れてしまえば、悩みも無くなるんだよ』という言葉も。


「じゃあ、スターダストじゃ客に薬飲ませてるのかよ」
「その可能性はあるな。もしそれが液体にでもなってたら、カクテルや洋酒に混ぜ合わせて客に提供するのも容易いしな」
「まぁ液体じゃなくても、粉状のものを氷に混ぜるとか、ですね」
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