TRIGGER!2
「あんのぉ、クソオヤジ!」
「そんな言い方はやめろ。俺はあの人を心から尊敬してるし、信頼も寄せている。お前が父親の事を何もわかってないだけだ、ジョージ」


 あー気色悪い、と、ジョージは舌を出す。


「それよりも、街の騒ぎが心配ですね。何もないといいんですが・・・」
「いいや、悪い予感ってのは常に当たるもんだ」


 ジョージがそう言った時、風間の携帯が鳴った。


「はい、風間です」


 風間は通話ボタンを押してベランダからリビングに移動して、何やら話をしている。


「彩香」


 新しいタバコを取り出して、ついでにこっちにも差し出しながらジョージは言った。
 彩香は箱から一本取り出して口にくわえる。


「何だよ」
「隼人は口で言うよりも美和の事を引きずってたんだよ。俺はあの頃の隼人を見てたから分かる。だがアイツは、お前に会って少し変わった」
「・・・・・」


 いきなりそんな事を言われても、彩香はどう答えていいか分からない。
 ライターの火をこっちに差し出しながらジョージは、困惑している彩香に笑いかける。


「ま、お前も何かと大変だろうがな、俺達がついてる。だから今はあまり考えるな」
「あぁ、そうだな」


 考えたところで、どうせ何も思い出せないのだ。
 ーー夢で見る、記憶の断片以外は。


「ほぉら、言ったそばから暗い顔すんな」


 がははと笑い、ジョージは彩香の肩を抱く。


「ちょっと目を離した隙に何してるんだ、ジョージ?」


 コホンと咳払いをしながら、風間が戻ってきた。
 ギクリと身体をこわばらせ、ジョージは慌てて彩香から離れる。
 それをひと睨みしてから、風間は彩香に携帯を手渡した。


「あたし?」
「あなたにです、彩香さん。どうしても若い女の子と話がしたいと言うもので」
「・・・?」


 電話の相手が峯口なら、そんな言い回しはしない。
 彩香は首を傾げながらも、携帯を耳に当てる。


「もしもし?」
『あぁ、お嬢ちゃんか。やっぱいいなぁ、あんなカタブツの声よりもなぁ』


 聞こえてきたのは、この街の警察署長である高田の声だった。
 風間の元上司だというのだから、電話番号を知っていてもおかしくはない。


「何だよ、あたしに用事か?」


 彩香が言うと、高田はヒャヒャヒャと笑う。
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