TRIGGER!2
☆  ☆  ☆




 時刻は深夜の3時を回ろうとしていた。
 今宵もまたここの繁華街でのバカ騒ぎは、佳境を迎えている。
 これから夜明けに向かって、ラストスパートとばかりに道行く連中のテンションはMAXだ。
 それ以上に、この店も盛り上がっていた。


「あぁ、彩香さん。またいらしてくれたんですね!」


 『スターダスト』に入りカウンターに座ると、店長の佐竹が彩香に声を掛けた。
 今度はちゃんと彩香の事を覚えていたらしい。


「何になさいますか?」
「瓶ビール。王冠付けたまま」


 彩香は短く応えて、店の中を見渡す。
 毎度のごとく、若い男女が入り乱れていて。
 咄嗟には人数すら把握出来ないくらい、人間がごちゃ混ぜの状態だ。
 佐竹はクスッと笑って、言われた通りの瓶ビールを彩香の前に置いた。


「この前もこうして飲んでたみたいですね、彩香さんの彼氏さんは」
「彼氏?」
「一緒に来てたでしょ、大柄な筋肉質の」
「あぁ、ぜんっぜん彼氏じゃねぇけどな」


 自分でビールの栓を抜きながら、彩香は言った。
 会話をしながらも、考えを巡らせる。
 二つの店を襲った殺人者は、ここにも狙いを付けているのだろうか。
 まだ何も起きてはいないようだが・・・だとしたら、この中の誰を狙うんだ?


「ねぇ、今日はオーナーのおっさんいないの?」


 彩香は佐竹に聞く。


「オーナーは今日はいらっしゃっていませんよ。何か悩み事ですか、彩香さん?」
「まぁな」


 佐久間はいないのか。
 そんな事を考えながら、彩香は適当に相づちを打つ。


「オーナーは昼間も忙しく仕事をしてますからね、ここにはあまり顔を出さないんですよ。この前はたまたま休診日の前日だったから飲みに来ていたんです」
「へぇ・・・」
「彩香さん」


 少し真剣な佐竹の声音に、彩香は頬杖をついたままカウンターの中の佐竹を見上げた。


「悩みなら、僕で良かったら聞かせてくれませんか?」


 そんな佐竹に、彩香はクスッと笑って。


「まだ二回しか会ってないのに?」
「えぇ、それでも俺は、初対面で彩香さんに教えてもらった事があるんです」


 佐竹はそう言うが、彩香には心当たりはない。
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