TRIGGER!2
 そして風間は、思わず勢い良く立ち上がる。


「みっ・・・!」
「み?」


 何故か急に立ち上がった風間を、彩香はきょとんとして見上げた。


「美和!!」
「はぁぁぁ!?」


 あまりにも大声を出した為、茂みの向こう側の連中に気付かれたらしい。


「誰だ!?」


 茂みの向こうがざわめく。


「お前なぁぁっ!」


 彩香も立ち上がり、呆然と二階の窓を見上げたまま立ち尽くす風間の襟首を掴んで走り出す。
 同時に、ビシッ、ビシッと銃弾が建物に当たった。
 これで確信する。
 あの連中は間違いなく悪者だ。
 逃げながら、彩香は風間にむかって怒鳴る。


「華麗にスルーするんじゃなかったのかよ!!」
「・・・・・」


 走りながら、それでも風間は答えなかった。
 ったくぅ、と、彩香は舌打ちする。
 そして、逃げ回る事、小一時間。
 追い掛けて来る怪しい連中を振り切るのは、案外簡単だった。
 駅に向かう通りに立ち並ぶテナントビルの隙間、営業中の店、身を隠す場所はたくさんあった。
 完全に気配が消えたのを確認して、2人は駅前のデパートの屋上で取り敢えず身体を休める。
 屋上は子供達の為のちょっとした遊び場になっているが、まだ開店前なので誰も居なかった。
 徹夜の場合、二日酔いというのだろうか。
 モーレツに渇く喉を潤したくて仕方ない。


「なぁ、小銭持ってる?」


 目の前に自販機があるのだが。
 あいにく、彩香は手ぶらだ。
 屋上のベンチに座っている風間は、首を横に振った。
 こうなったら、自販機を叩き壊してでもジュースを取り出してやろうか。
 そんな考えが頭をよぎった時、風間が口を開く。


「見ましたか、彩香さん」


 視線は足元に落としたまま。
 風間が何を聞きたいのかは、直ぐに分かった。
 彩香が佐久間クリニックの二階の窓を見上げた時、確かにそこに人影があった。
 角度が悪くて、そしてほんの一瞬だったから良くは見えなかったが。
 二階の窓を開けたのは、真っ赤なドレスを着た女だった。
 髪の毛をトップにまとめ、うなじから一房だけカールした長い髪を胸元まで垂らし。
 耳には大きなイヤリング、さらけ出した白い肌。
 上半身だけだったが、プロポーションもバツグンで。
 ひと目で、夜に繁華街で働いている女だと分かった。 
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