TRIGGER!2
「あ・・・・あぁぁぁぁぁっ!!」


 綺麗に編み上げたヘアスタイルをかきむしり、少女は気が狂ったように叫びだした。


「あぁぁぁっ!! あぁぁぁっ!!」


 何度も何度も。
 床にひざを突き、喉が張り裂けそうな程、少女は叫び続ける。
 それを彩香は、冷静な顔で見下ろしていた。


「それ以上はダメですよ、彩香さん」


 不意にそんな声が聞こえた。
 振り返ると、入り口に佐久間が立っている。
 そして、ゆっくりとこっちに向かって歩いてきた。
 途中、カウンターの中で息絶えている佐竹に視線を送り、悲痛な顔を浮かべて。


「彼女の夢は、ダンサーになることだったんです。けれど、それは叶わなかった。色々な人間、色々な事が彼女の夢を邪魔したんです」


 発狂寸前の中、少女はそれでも佐久間の事は認識出来るらしく、手をさしのべた佐久間にすがるように抱き付いた。
 しっかりと少女の身体を抱え、その背中を撫でながら佐久間は彩香を見る。


「この子はもうすぐ立ち直れる。それなのに、彼女を否定するような言葉は言っちゃダメなんですよ。おかげでまた1から治療のやり直しだ」


 穏やかな口調。
 だが、そこにな微かに怒りが含まれていた。


「やり直さない方がいいんじゃねぇか?」


 彩香が言う。


「前に言ってたな。過去を忘れれば悩みは全て解決できるってな。それがどうだ? そこの女と言い、佐竹と言い・・・結局はみんな壊れるだけじゃねぇか!!」


 しばらく佐久間は沈黙していた。
 だが、急に笑い出す。


「壊したのはあなたですよ、彩香さん」


 高らかに笑いながらそう言い出す佐久間に、彩香は眉間にシワを寄せる。


「あなたの一言で、彼女の心は壊れてしまった。そして佐竹くんは、あなたを見て、薬を飲むのを止めると言い出したんです」
「どういうことだよ?」
「彼はここで毎日、天職であるバーテンダーの仕事をこなしていれば良かったんですよ。過去を忘れ、過去の栄光に捕らわれず・・・新しい1日を忙しくこなす。そうしていれば何の悩みもなく、好きな仕事をして楽しく生きていけたんです」
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