TRIGGER!2





「何か機嫌悪いのか、ジョージ?」


 病院に向かう救急車の中で、彩香はさっきから口数が少ないジョージの顔を覗き込んだ。


「別に」
「もしかして、怪我、ヤバいのか?」
「何でもねぇよ」


 2人とも一応、応急手当はしてあるのだが。
 いつもなら看護士にナンパでもしそうなものを、ジョージはさっきから仏頂面で腕組みをしたまま、何も喋らない。
 何でなのか分からずに、彩香は首を傾げる。


「彩香さん」


 風間が彩香を呼んだ。


「病院にはイチゴが居ますよ。私達が治療を受けている間、ついでにお見舞いしてきたらどうですか?」


 ついでというのも失礼な話だが、それもそうだなと彩香は頷いた。
 それに、血まみれのこのシャツで病院を歩き回るのも気が引ける。
 イチゴの所に着替え用のシャツがあるはずだ。
 サイズが大きいのはこの際我慢して、それこそついでにシャツを借りる事にしよう。
 自分のシャツを眺めている彩香に、風間はスーツの上着を脱いで手渡した。


「袖が破れていますが、ないよりはマシでしょう。着ていて下さい」
「あぁ、サンキュ」


 言われた通りに上着を羽織ったら、いつもの風間の匂いがした。
 たったこれだけの事なのに、包み込まれるような安らぎを感じる。
 ・・・だが、それにしても。


「ねぇ、ホントに何か嫌なことでもあったのか?」


 まだ口を開かないジョージに、彩香が声を掛ける。


「・・・うるせぇな」
「ムカつくなぁ!」


 彩香はジョージに詰め寄る。


「言いたい事があったらハッキリ言えよ! 訳わかんねぇじゃねぇか!」
「・・・・・」


 彩香が怒鳴っても、ジョージは両目を閉じて寝たふりをしている。
 そんなジョージの態度に、わなわなと震える彩香。
< 135 / 206 >

この作品をシェア

pagetop