TRIGGER!2
「・・・テメェ・・・」


 グイッとジョージの胸ぐらを掴んで。


「言いたい事も言えねえのかよ、図体デカい割には女々しいな」
「・・・・・」


 そんな彩香を、ジョージは見事に無視している。
 風間も呆れたように、そんな2人のやり取りを見ていた。
 彩香は拳を振り上げる。


「お前・・・いい加減に・・!!」
「あのぉ・・・すみませんが」


 救急車の隅にちょこんと座っていた警察官が、やたらと間延びした口調で話し掛けてくる。
 あからさまに『僕、新人です!』と顔に書いてある、制服も真新しい小柄な若者だった。


「こんな所でケンカは・・・止めましょう、狭いですし・・・揺れますし」
「あァ!?」


 怒りに任せたまま振り返る彩香に、新人警官はビクっと身体を震わせて。


「いやですから・・・救急車の中は、ケンカする場所じゃありません・・・それに皆さん、お友達じゃないですか・・・仲良くしましょうね?」


 彼は多分、本気で彩香を止めようとしているのだろう。
 だが、あまりにもおどおどした態度と怯えた表情に、我慢出来ずに風間が笑い出す。


「君、名前は?」
「はっ・・・はい、山田と言います! 山田太郎です!」


 背筋を伸ばしてそう言う山田を、彩香はジョージの胸ぐらを掴んだままガン見する。


「山田太郎・・・?」
「おいおい、偽名じゃねぇよな?」


 あまりにもオーソドックスな名前だったからなのか、ジョージも真顔でこう聞いて。
 だが山田も、ジョージに負けないくらい真剣に言い返す。


「警察官って・・・偽名でなれるものなんですか・・・?」
「・・・ぶっ」


 たまらずに、ジョージは思い切り吹き出した。
 風間も苦笑しながら、山田に向き直る。


「まだ新人なのに私たちの監視役を命じられたんです、署長はそれだけあなたに期待してるんですよ。それに、彩香さんを止めたその手腕、私は賞賛に値すると思いますね」
「あっ・・・ありがとうございます!」


 背筋を伸ばして敬礼する山田。


「止められたんじゃねぇ、調子狂うんだよ!」
「まぁまぁ、彩香さん」


 少し間違えば、今頃、この山田の上司だったかも知れないのだ。
 初々しさ満開の彼を、風間は微笑ましい気持ちで見ているのかも知れない。


「いやあたし、ただ単に人手が足りないだけだと思うけど」


 そう言おうとした彩香の口を、ジョージが塞ぐ。
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