TRIGGER!2
「あっ・・・!」


 山田が慌てて手を伸ばすが、彩香はその手を掴んで。
 封筒の中に入っていた写真を、微動だにせずに見つめる彩香の隣に、ジョージと風間が並ぶ。


「これは・・・」


 風間の顔付きが険しくなる。
 そこに写っていたのは、スポットライトが煌めくステージの上で、赤いドレスを着て歌う美和の写真だった。
 金色の大きなイヤリングに光が反射して、歌っているその表情は本当に生き生きとしていて。


「誰ですか、この美人・・・?」
「黙ってろ」


 首もとにホクロはない。
 これは間違いなく、本物の美和の姿だ。
 彩香はちらりと横目で風間の顔を覗く。
 それは、悲しむような、懐かしむような、複雑で読みとりにくい表情だった。


「あっ・・・あのぉ~・・・彩香さん、そろそろ手を・・・」


 トコトン空気を読まない山田に、彩香は小さく舌打ちをして手を離す。


「おい、高田のジジイはどうしてこれを?」
「はぁ・・・三年前の騒ぎがどうので、当時の捜査資料をひっくり返してたら、これが出て来たとか・・・」
「貴重な資料をありがとうございます」


 風間は写真から目をそらし、山田に言った。


「もう帰っていいですよ、山田君。高田署長は私たちが署に行かないと見越して、この封筒をあなたに預けたんです」
「どういう・・・事ですか?」


 そう聞いてくる山田に、風間は険しい顔を向けた。


「署長は俺に、もう1つ大事な事を思い出させてくれたんだよ」


 あまりの迫力に、山田は思わず身震いして、風間から一歩離れる。
 そこへ、屋上のドアが開いてオカマちゃんトリオがやって来た。


「あぁ、やっぱりここにいたのね!」
「ん? どうしたお前ら?」


 キウイとグレープは、幾つかのピンクの紙袋を抱えている。
 彩香が聞くと、イチゴは笑って。


「退院してきちゃったわ、たった今!」
「退院って・・・医者に許可取ったのかよ?」
「えぇ、先生むしろ喜んでたわよ」


 まぁ、この3人が大人しく寝ている訳はないのだから、イチゴが退院すると言った時は速攻で頷いたのだろう。
 フリフリピンクのネグリジェで院内を歩かれなくても済むし。


「おっ・・・お知り合いですか?」


 彩香の影に隠れるようにして、山田が言った。
 今はかろうじて化粧と洋服はバッチリ決めているのだが、入院生活であまり手入れをされていない無精ひげだけは、どうにもならなかったらしい。
 結果、一目でそれと分かるオカマちゃんっぷりだ。
 まだあまりこういう人種に慣れていないだろう山田青年が怯むのも、無理はない。
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