TRIGGER!2
「佐久間と取り引きしてたヤツ・・・!」
「その通りです」


 最初に佐久間心療内科クリニックに確認に行った時に見た、スキンヘッドのあの男だ。
 それが何故、三年前のこの写真に写っているのか。
 すると風間は、声を絞り出すように。


「私は・・・この男を、知っています」


 皆が一斉に、風間に注目する。


「三年前、この男ーー田崎幸生は、この街の刑事でした」


 その言葉には、彩香たちだけではなく、山田までが眉をひそめた。


「彼は三年前のある日、行方が分からなくなったんです」


 この街で行方不明者は、さほど珍しい事ではない。
 居なくなった人間が三日後に繁華街の中心を流れる川で遺体となって見つかった、などという話はゴロゴロあるのだ。
 だが唯一、田崎が行方不明になった件で不審に思ったのは。


「当時の高田署長は、ずる賢くて狡猾な男であるあの田崎が行方不明になるなど、信じられないと言っていました」


 田崎は警察官でありながら、この街の怪しい連中と活発に交遊していた。
 それは、この街の警察官なら多少はあり得る事なのだが・・・噂では、たちの悪い連中から裏金を巻き上げ、私腹を肥やしていると評判だった。
 だが田崎はやたらと頭が切れる男で、その証拠は一切表には出なかったから、誰も彼を咎める事が出来ない。
 それがある日、何の前触れもなく、忽然と姿を消した。
 仲間である筈の警察官たちはその事実に大して興味もなく、おざなりに行方を探しただけで、あとは放置して。
 いつの間にか、忘れ去られていた。
 だが今になってこの写真を引っ張り出してきたという事は、高田は他の警察官よりも深く、田崎の事を調べていたのかも知れない。
 そうこうしているうちに風間も警察官を辞め、それ以来高田とこの話をする事もなかった。


「俺があの時、気付いていればーー!」
「隼人」


 悔しそうに言う風間に、ジョージが声を掛ける。


「そんな事は誰も思わねぇよ。ここにゃ、過ぎた事をどうこう言う連中はいねぇ」
「そうよぉ、風間ちゃん。気付いただけエラいわよ。彩香なんて、誰だかも思い出せなかったんでしょー?」
「あのなぁ、これ、よぉく見てみろよ。帽子被ってたら別人なんだよ。あん時ゃコイツ、つるっぱげだったんだからな!」
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