TRIGGER!2
 彩香にはそれが、少しだけ、羨ましくもあった。
 そんな彩香の肩に手を置いて、ジョージは笑いかけてくる。


「ま、それだけ気合いが入ってるってこった。いいことじゃねぇか。後は我らが参謀長の指示に従うだけさ」


 そう言った時、屋上のドアが開き、風間がやってきた。


「遅ェよ隼人、みんな待って・・・」


 文句の一つも言ってやろうかと、彩香が振り向いたが。
 風間が連れてきたもう1人の人物に、ここにいる全員が固まった。


「おい、何かの余興か?」


 ジョージもそんな疑問を口にする。
 風間が連れてきたのは、水島千絵だった。
 それだけじゃない、水島はロープで上半身をぐるぐる巻きにされている。
 そこから伸びるロープの端っこを、風間が握っていた。
 拘束されている本人も何が起きているのか全く分かってないらしく、苦笑いを浮かべている。


「あっ・・・あのね、あたし大事な研究があるの。だから、みんなで遊んでる時間、ないんだけどぉ・・・」
「ジョージの質問に答えるなら、これは余興です。それも、命を懸けたゲームの、ね」


 みんなの所に近付いて、風間は静かに言った。


「余興って・・・何するつもりなんだよ?」
「言ったでしょう、彩香さん。ゲームです」
「あたしが言ってるのはそんな事じゃねぇんだよ」


 食い下がろうとする彩香を静止して、ジョージが風間に聞く。


「先ずは説明してもらおうか、そのゲームの内容をな」
「この街の中で、ドアの向こう側の世界を知っているであろう人間全てに、昼間、布告しました」
「何て?」
「今夜12時に、水島千絵を殺す、と」


 誰もが何も言えなくなる。
 あまりにも突拍子のないこの布告に、どこからツッコミを入れていいのか分からない。
 だがとても、風間が冗談を言っているとは思えなかった。
 それでも、本気で言っているとは信じたくない。


「じゃあ聞くけどな」


 多分この中の誰よりも風間の事を知っているジョージが一番冷静なのだろう。
 タバコを取り出して火を点けながら。


「今夜の目的は、黒幕を炙り出して片付ける事だと思うんだが・・・何故そこに千絵ちゃんを引き合いに出さなきゃならねぇんだ?」
「あの写真です」


 高田が彩香たちに託した、一枚の写真。
 生き生きと歌っている、美和の姿。
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