TRIGGER!2
「最初に彩香さんとドアの確認をした時、佐久間と取り引きをしていたのは、三年前に忽然と行方をくらました元警察官、田崎という男です」
「あぁ、そうだな」
「三年前の当時から彼の周りには、あまりいい噂はありませんでした。この街のアウトローな連中と絡み、裏の世界で色々な取り引きをしながら私腹を肥やしていると・・・」


 それには、警察官という立場も都合のいいポジションだったのかも知れない。
 だがまだ、その事実と水島千絵は繋がらない。


「今回、偶然私達が目撃したのは、田崎は佐久間に『記憶を無くす薬』を売りつけている現場です。と言うことは、田崎は、薬のバイヤーなんですよ」


 自分の患者にあの薬を処方していた佐久間。
 ただの医者でしかない佐久間は当然、あの薬を製造する事は出来ない。
 患者を救う為に、佐久間は三年前に既に知り合いだった田崎から、薬を買い続けていた。
 それも、あの写真を見る限りでは、二人はただの知り合いではない。
 大好きなジャズシンガーのステージを見ながら一緒に酒を酌み交わす、そんな仲だ。


「では何故、田崎は薬の存在を知っていたんでしょう?」


 風間の問い掛けに、彩香は考えを巡らせた。
 薬を開発した第一人者は、水島千絵だ。
 その水島は三年前、峯口やジョージ、風間の手によってここに保護されている。
 ・・・いや、保護ではない。
 本意なのか不本意なのかは分からないが、それまで水島を手元に置いて薬を開発させていた人物にとっては、水島は拉致されたも同然だ。
 峯口親子の手によって。
 じゃあ薬を開発させていた人物とは誰なのか。


「前は田崎のところで薬の開発をしてた・・・」


 彩香の言葉に、その通りです、と、風間は頷いた。


「付け加えるなら、水島先生は任意で田崎のもとに身を寄せていました」


 当の水島は疲れたのか、縛られたまま屋上に座り込んでいる。
 もしそれが本当なら、田崎にとって水島は金の成る木であっただろうし、水島にとって田崎は思い切り研究をさせてくれる存在ーー。


「あたしはねぇ・・・どこでも良かったのよ。研究が出来るなら、どこでも・・・」
「もう止めましょう、水島先生。あなたは本当は、田崎のもとを離れたくなかった筈です」


 風間の言葉には、水島は何も答えなかった。
 それでも、風間は続ける。
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