TRIGGER!2
 雛子から引き離した彩香の肩を、今度はジョージが掴む。
 おかしいとは思っていた。
 佐久間クリニックから出て来た彩香の様子が。
 その顔つきがまるで、別人のようだった。


「あたしがあたしで居られる間に、片付けなきゃならねぇんだよ。あたしは・・・」


 ジョージの手を振り払い、彩香は真っ直ぐにその顔を見つめた。


「あたしは、お前ら全員の事・・・」


 言葉にならずに、彩香は俯く。
 そんな彩香を見つめるジョージの表情は切なそうだった。


「お前・・・」
「最後の戦いは、スターダストだ。だがそこに行くまでは遠い。それでもお前たちは進まなくてはならん」


 雛子が、静かに言った。


「急げ。そこには・・・」


 言いかけて、雛子は苦しそうに両手で頭を押さえてうずくまる。


「おい、大丈夫か雛ちゃん!」
「大丈夫だ・・・無理を承知で『見た』からな」


 息を整えると、雛子はゆっくりと立ち上がった。
 身内の事を占うと、苦しみを伴うらしい。
 だがそれでも、雛子は彩香に会いたかった。


「彩香」
「何だよ?」
「お前はもう、気付いている筈だ。お前の心を埋めたものはもう、決して消える事はないのだと。それを抱えて生きる未来はーー地獄だ」


 それを聞いて、彩香はフッと笑う。


「ホント、最初から最後までムカつくよ、あんたは」
「お前ーー」


 雛子は一瞬、眉をひそめ・・・そして目を細めると、真っ直ぐに彩香を見つめる。


「そうか・・・」


 そして、視線を外して。


「信じているんだな?」
「あぁ、そうだ」


 短い会話。
 ジョージだけが意味が分からず、動揺しながらも2人のやり取りを見つめる事しかできない。


「じゃあ、俺も信じるとしよう。お前が行く未来をな」
「ご期待に添えるか、微妙だけどな」


 それだけ言うと、彩香は歩き出す。


「どうなってるんだよ雛ちゃん」


 歩き出した彩香を目で追いながら、ジョージが雛子に聞いた。
 雛子は心配そうにこっちを覗き込むジョージを見上げ、笑顔を作った。
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