TRIGGER!2
「そんなに心配するな。あいつが信じているものは、あいつが信じている以上に大きなものなのだ」
「あのなぁ、俺には何の事だかさっぱり分からねぇんだよ。もっと分かりやすくだな」
「ジョージ。お前はデカい割には昔から心配症だからな。取り敢えず飛び込んでみろ、目の前の渦に」


 ここに来て、叔母に当たる雛子に叱られるとは思わなかった。
 がっくりと肩を落とすジョージ。


「頼んだぞ。彩香の事も・・・美和の事も」


 そう言われて、ジョージは顔を上げる。


「そう言えば、美和にゾッコンなカタブツ野郎は・・・そろそろ動いてもいい筈なんだがな」
「風間ならもう既に動いているだろう」


 雛子がマンションの屋上を通ってこっちに来た時にはまだマンションにいたのだが。
 雛子が気になったのは、目が覚めるような色のニッカポッカを履いたオカマちゃん3人と、ロープでぐるぐる巻きにされた医者だ。


「何かあいつら、遊んでいるのか?」


 真顔でそう聞いてくる雛子に苦笑しながら、ジョージは彩香の後を追った。




☆  ☆  ☆




 目指すは『スターダスト』。
 佐久間クリニックから戻ってきた彩香たちは繁華街の西側から進む。
 目的地は繁華街の中心部近くにあり、まともに行けばゆっくり歩いても五分あれば余裕で辿り着くのだが。
 楽しそうに行き交うまやかしの人々と、それとは違う、明らかに殺気を放った連中とが混じった異様な雰囲気は、彩香とジョージがここから先に進むのを拒んでいた。


「なぁジョージ」


 銃を構え、物陰に隠れながら彩香はジョージを見た。


「何だよ?」
「提案なんだけどな。あたしがあいつらの前に出る。だからあんたは、このまま『スターダスト』に直行しろよ」
「ざっと見ただけでも8人はいるぜ。お前1人じゃ、無理だ」
「それが無理じゃねぇんだよ。奴らはあたしを殺せない」
「あのなぁ彩香」


 ジョージは彩香の目線まで屈む。


「お前に何が起きたのか、俺にゃさっぱり分からねぇ。だがな、佐久間クリニックから帰ってきてからのお前を見てると、俺たちの前から消えそうな感じがしてならねぇんだがな」
「ま、間違っちゃいねぇよ」


 あっさりと肯定する彩香を、ジョージは険しい顔で見つめる。
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