TRIGGER!2
「彩香・・・」


 その表情は。
 少なくとも、風間の知っている彩香ではなかった。
 まともに歩けない程の痛みが襲っている筈なのに、まるで何もないように、眉ひとつ動かさない。


「彩香!」


 立ち上がって、風間は彩香の頬を両手で挟む。
 目の前で大声で呼びかけ、やっと彩香は風間の顔を見つめた。


「彩香・・・?」


 うつろな目で、彩香は呟く。


「おい隼人、店の中にゃ誰もいねぇ・・・」


 その時、ジョージが店から出て来た。
 そしてすぐに、彩香に気付く。


「彩香! おい、大丈夫か!?」
「様子がおかしい。直ぐにマンションに戻って、水島先生に」
「あたしなら、ここに居るけど?」


 振り向くと、水島が立っていた。
 その後ろには、桜子と友香、それに雛子の姿もある。
 水島のロープは解かれていた。


「千絵ちゃん! 助けてくれ」


 ジョージが水島の手を引っ張って彩香の前に連れて行く。
 風間は桜子に声を掛けた。


「どうしてここに・・・?」
「マンションに2人、真っ黒い人が来たわ。舐められたもんよねぇ、たった2人なんて、あっという間に片付けちゃったわよ」


 腕組みをしながら、桜子は笑う。


「だから暇になっちゃってね。現場がどうなっているか、見に来たの」
「だからって・・・」


 まだ何かを言おうとする風間に、友香がグイッと近付いた。


「風間さん。考えてみたら水島先生も当事者の1人なのよ。だから彼女には、見届ける義務があると思う。それに、ガッツリ巻き込んだのはあなたよ」


 それにはさすがの風間も、何も言い返せなかった。


「だがよ、店の中には誰も居なかったんだよ。何処に居やがるんだ、その田崎っつう野郎は」


 クソッ、と舌打ちをするジョージ。


「どうですか、先生」


 彩香の様子を見ていた水島に、風間が聞いた。


「そうねぇ、銃創はどっちも貫通してるから、早めに治療すれば命に関わる怪我ではないわ。だけどこの子、もしかして記憶がーー」


 それを聞いた一同の動きが止まった。
< 186 / 206 >

この作品をシェア

pagetop