TRIGGER!2
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 煌びやかな装飾に彩られた店内。
 豪華なシャンデリアと、ステージの壁にかけてあるスパンコールを散りばめたカーテン。
 そのステージの前に、安物のスーツを着たスキンヘッドの男が1人、立っていた。


「やぁ」


 彩香たち3人の姿を見ると、男はこっちに向けて軽く手を上げる。
 間違いない、最初に佐久間と取り引きてしいた薬のバイヤー、田崎だ。


「テメェに気軽に挨拶される程、知った仲じゃねぇがな」


 田崎に銃を向けて、ジョージが言う。
 これっぽっちも動揺しない田崎。
 風間も、警戒しながら銃を向け、ぴしゃりと言い放つ。


「俺達とあなたの間に余計な問答は必要ない」
「確かに、こうなってしまっては余計な話は省いた方が合理的だな」


 余裕の表情を崩さずに、田崎は薄笑いを浮かべながら言った。


「覚えているよ。俺が警察を辞める直前に入ってきた新人の坊やだろう? 確かーーエリートコースから弾き出されてこんな場所まで吹っ飛ばされた、とか言う」


 風間の眉間のシワが深くなる。


「ま、そう怖い顔すんなよ。お互いに銃を突きつけあってても、膠着状態になるだけだろう?」


 やはり、姿は見えないが・・・今、この場で、黒ずくめの男の残りが、彩香たち3人をどこかから狙っている。
 田崎の余裕はここから来るのだ。


「取り引きと行こうじゃないか」
「テメェの命に見合うだけのもの、用意してんのか?」


 鋭い目つきでジョージが言うと、田崎は腕を組んでニヤリと笑う。


「俺はそんな大事なものを取り引き材料にするほど無鉄砲じゃない。金ならいくらでもあると言いたいが・・・天下の峯口建設さんは、たかがそんなものじゃ動かないだろうしね。取り引きというものは、お互いにとって利益があるものじゃなければ、意味はない」
「俺たちにとっての利益はテメェの存在が消える事だ」
「冷静にならないと、それこそ命取りだよ、峯口の息子さん」


 ジョージにとっては、峯口という名前も、その息子だと言うのも全く意にそぐわない。
 田崎を睨み付け、今にも引き金を引いてしまいそうだった。
 だが彩香が、風間とジョージの一歩前に出る。
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