TRIGGER!2
「ゴチャゴチャうるせぇな、オッサン。テメェの頭に一発ぶち込みゃそれで終わりだ」
「お嬢さんも無理しない方がいい。体調が悪いんだろう?」


 そう言って、田崎はポケットから小さな袋に入ったものを取り出した。
 彩香は顔をしかめる。
 そこには、錠剤がいくつか、入っている。


「先ずはこちらの条件を言おう。峯口さんの所に、俺の内部事情に詳しい人間がいるはずだ。その身柄をこっちに引き渡す事。それと、水島千絵も一緒にな」
「我々にとってさほど魅力的な条件でもないな。そちらの内部事情などこっちは興味ないし、水島先生は拘束している訳ではない、自分の意思でこちら側に居るだけだ」


 風間が答える。


「・・・ねぇ、今千絵ちゃんがどうのって言ってた?」


 “スターダスト”のステージ脇。
 ドアを抜けてこっちに戻ってきた桜子と水島、そして友香は、ダンサー用の様々な衣装に紛れながら、フロアの様子を伺っていた。
 水島は読み取れない表情で、田崎の方を見つめている。
 こっちに戻ってきてようやく顔色が回復しつつある友香も、固唾を飲みながらフロアの動向を見守っていた。


「まぁ、そう突っぱねる前にそちらへ提示する条件も聞いてくれよ。もし君たちが俺の条件を飲んでくれたら、俺はこの街から永久に撤退する。もう二度と、この街には戻ってこない。当然、君らの社長にももう、関わらないよ」
「何言ってやがる。元はと言えばテメェが勝手にちょっかい出して来たんだろうが!」


 かなりイラついているのか、ジョージの声は珍しくあからさまに怒りを含んでいた。
 だが田崎は未だに余裕の構えを崩さない。
 その余裕はどこから来るのか。


「それだけで我々が取り引きに応じるとは思ってないんだろう?」


 風間は単刀直入に聞いてみる。
 人のことはあまり言えないが、この男の回りくどい言い回しは、風間にしてみてもイライラがだんだん増してくる。
 そんな様子を楽しむかのように、田崎は笑った。
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