TRIGGER!2
「もちろん・・・」


 生唾を飲み込みながら、田崎はまた縋るような視線を水島に向けた。


「千絵に決まっているじゃないか。ずっと前から俺たちは一緒に居ただろ?」


 田崎が言った途端、風間が田崎に向けて引き金を引いた。
 だが一瞬早く、カウンターの中の男の一人が発砲し、風間が持っていた銃を弾き飛ばす。


「っ!!」


 風間は右手を押さえ、低く呻いた。
 衣装部屋でそれを見ていた友香と桜子は、思わず口元を手で覆う。
 風間の右手の甲から滴り落ちる血が、フロアの床を染めていく。
 ジョージは衣装部屋の方に『動くな』とジェスチャーで伝え、彩香の様子を伺った。
 風間が撃たれているにも関わらず、無表情のまま振り向きもせず田崎と水島のやり取りを見据えていて。


「やっぱり、嘘つきね」


 それだけ言うと水島は、ジョージと風間の元へ移動する。
 白衣のポケットに両手を入れて、田崎にはもう、視線も送らずに。
 すると田崎は、着ていたスーツの内側から銃を取りだした。


「おい」


 その照準は、彩香に向けられている。
 田崎から彩香が立っている場所までは3メートル、素人でもなかなか外せる距離ではない。


「俺が雇ったら殺し屋はもう、俺の言うことなんか聞きやしないんだろう? なら、指示役のお前が消えたらどうだ? あいつらはまた、俺の言うことを聞くようになる」
「・・・あぁ、そうだな」


 少しだけ呆れた顔で、彩香は言った。


「おい、聞いてるか? お前たちが一発でも撃ったら、この女を道連れにしてやる!」


 田崎はかろうじて自分の味方になる可能性のある黒ずくめの男達に向けて怒鳴る。
 だが、言葉を向けられた四人の男達も、銃を向けられている彩香も、全く動かない。
 桜子は無意識に唾を飲み込んで。
 友香は、両手をギュッと胸の前で握り締めた。
 田崎が呼吸を荒くしながらもじりじりと後ずさりをして、衣装部屋の方に移動した。
 彩香は微動だにせず、そんな田崎の様子をじっと見つめていて。


「負けを認めるか?」


 田崎をゆっくりと指差しながら、彩香は言った。
 ピクリと、田崎が動きを止める。
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