TRIGGER!2
 そして出口のドアの前で立ち止まり、肩越しに振り返る。


「記憶を無くしたお前が生きていける場所は、我々の元だけだ。苦しみに耐えきれずに壊れないでくれよ。お前は我々にとって、貴重な逸材だからな」


 その時、店の入り口のドアが開いた。


「あぁ、一応全員、動かないで貰えるかぁ?」


 強化プラスチックの盾を手にぞろぞろと店に入ってくる警察官の中に、高田の姿があった。
 だが、男は全く動じてはいない。


「我々の用事は全て終わりました。後の処理は任せます」


 高田の隣を通り過ぎざまそう言って、男は黒ずくめ達を引き連れて店を出て行った。
 高田はそんな男を引き止めるでもなく、表情を固くしたまま、その場から動かなかった。


「ちょっとぉ、署長! 何でアイツら大人しく外に出してんの!?」


 何もしない高田に、桜子が食ってかかる。


「それが出来たらやってるよ。どうやら奴らは、俺たちにゃ全く歯が立たない相手らしいからなぁ」


 何よそれ、とまだ文句を言おうとする桜子を制して、高田はフロアをぐるりと見渡して。


「風間がウチの山田に持たせたメモを見たから、暇な部下たちにこの店を見張らせてたんだがなぁ。我々ド素人じゃ敵わないから応援を寄越せと散々上に言ったんだよ。だが、全く応援を寄越さないどころか、余計な手出しをするなと、あのバカ野郎共は言いやがった」


 それとなぁ、とタバコをヨレヨレのスーツから取り出しながら、高田は続ける。


「ここにいるのは上の命令を無視する元気がある奴らばかりなんだがなぁ」


 その中には、新人警官の山田の姿もあった。


「俺の目的は、そこのお嬢ちゃんを迎えに来る事なんだよ。それに、早めに大きな病院に連れて行かにゃ、そこの二人もさすがに危ないんじゃないか?」


 撃たれたジョージと風間の意識は、もはや朦朧としている状態だった。


「大丈夫よ。たかがこんな傷、あたしが軽く治してあげるから」


 水島が言う。
 そりゃ頼もしいなぁ、と高田は少しだけ笑顔を作って、彩香に向き直る。


「大丈夫かい、お嬢ちゃん」


 そう言いながら、高田はゆっくりとした動きで彩香の手から銃を取り上げて。


「さぁ、ワシらと一緒に来るんだ。お前さんが今すぐに行かなくちゃならない場所に連れて行くからなぁ」
「ちょっと、勝手なことしないで」


 そう言おうとした桜子の肩に手をかけて、友香が首を横に振る。
 高田の部下たちがジョージと風間を運ぼうと担架に乗せているのを、彩香はただ見つめていた。
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