TRIGGER!2
 彼女はそれでも、そこに立ったままだった。

 しばらく銃を向けたまま、峯口はそんな彼女の表情を伺う。

 目の前に突き付けられている事実をそのまま受け入れられなかったから。

 もしかしたらたった今起きているこの現状が間違いなのではないか。

 万に一つの可能性を願って。

 そんなところが、自分が年を取ったんだと自覚させる。

 今まで、こんな事はなかった。

 自分が関わる全ての人間への責任を背負うと決めた、あの時から。

 それを背負って余りある位の大きな器を手に入れる為には、生半可な覚悟では生きてすら来れなかった。

 だがそれは決して褒められた立派な事ではなく、それを隠す為に必死で取り繕ってきた筈なのに。


『あんたもーー血の匂いがする』


 目の前の、まだ幼さの残る彼女には一瞬で、それが見破られてしまった。

 自分の半分しか生きていない筈なのに、それを見ぬけるという事は。

 この彼女もまた、地獄のような人生を送ってきたという事だ。


「・・・・・・」


 峯口は、銃を持っていない自分の手のひらを見つめた。

 そこには、さっき掴んで流れ落ちた筈の砂粒がいくつか、残っていた。

 それを見て不覚にも、目頭が微かに熱くなる。

 流れ落ちずにここに留まる、いくつかの砂粒。

 自分の手の中に留まったたったこれだけの砂粒でも守ってやれるような男に、俺はなったのだろうか?

 手をギュッと握り締め、峯口は彼女の方に視線を向けた。

 彼女はーー。

 銃口を向けられているにも関わらず、微笑みを携えてこっちを見つめている。

 微塵の疑いもなく、信じているのだ。

 本人は忘れてしまっているこの約束を、自分がちゃんと守ってくれるのだと。


「そうか・・・そうだよな」


 それならば。

 ちゃんと、応えてやらないといけない。

 峯口は、砂粒が付いた手を、持ち上げている銃に添えた。
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