TRIGGER!2
「ま、大体の事は分かった。取り敢えず飲め」
「何でだよ?」
「彩香と久しぶりのデートなんだぜ? おとーさんとしては、これ以上嬉しい事はねぇだろ?」


 にこにこしてウイスキーのボトルをこっちに傾ける峯口。


「誰が親父だ」


 本当ならここでもう帰っていまいたいところなのだが、状況の打開策をこの男の口から聞いてない以上、我慢するしかない。
 彩香は自分のグラスを、ドン、と峯口の前に置いた。


「あらまぁ、今日はやたらと素直だねぇ、彩香ちゃん」
「やかましい」
「ま、好ましい事だな。じゃ、そんないい子の彩香ちゃんには、お望みどおりに仕事を与えようか」


 彩香のグラスにウイスキーを注ぎながら、峯口は言った。
 バカにされている感がありありだったが、彩香はそのイライラを注がれたウイスキーと一緒に腹に流し込む。


「何だよ?」


 彩香は先を促した。


「もう何カ所か、確認してもらいたいドアがあるんだよ」


 タバコを口にくわえ、峯口は友香にペンとメモ用紙を貸してくれと頼んだ。
 それを受け取ると、カウンターで何やら書いて彩香にそのメモを渡す。


・『ムスク』
・『レッドルビー』
・『スターダスト』


 と、書かれている。


「場所は知ってるか?」
「あぁ」


 彩香は頷いた。
 三件とも、この繁華街の中にある飲み屋だ。


「まぁ、当たりの確率は少ないんだろうがな、一応念の為確認しておかなくちゃならねぇんだよ」


 それはいいが、彩香がたった今報告した件はどうなったのだろう。


「つか、隼人の件はどうすんだよ。あの病院の変な取り引きの件も」
「ま、それはそれで適当に対処しておく。こっちも四階のヤツが見つけた新しい場所だからな、早めに確認しておかねぇと面倒なんだよ」


 彩香にとっては隼人の件が一番の心配事なのだ。
 だから、こうやってこのオヤジに無理して付き合っていると言うのに。


「んなもんジョージにやらせりゃいいじゃん」
「そうなんだけどな、ウチの可愛いバカ息子、今日の夕方、勝手にあっちに行ったらしい」
「・・・・・へ?」


 今日の夕方というと、彩香の部屋で勝手にビールを飲んだ後か。
 あっちの世界での連絡手段というのは、今のところ見つかってはいない。
 電波がないから、携帯も通じないのだ。
 と言うことは、勝手にあっちに行ったジョージとは、今は連絡が取れないと言うことだ。
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