TRIGGER!2
「でもね」


 イチゴはクスクスと笑いながら言う。


「あの子ってさぁ、思ってるとひょこっと現れるのよねぇ」


 その言葉には、キウイとグレープ、それに桜子もうんうんと頷く。


「確かにそうね。何してるのかなぁって思い出すと、その日は飲みに来てくれたりね」
「そうそう、あるわそれ~!」


 オカマちゃん4人は、キャハハと笑い合っている。
 思い出すと会える。
 そんな事があり得るのだろうか。


「つか・・・」


 彩香は腹にぐっと力を入れた。


「いい加減にしろお前らぁぁぁぁ!!」
「きゃーーーっ♪」


 それを待っていたかのように、店中を逃げ回る3人。
 他の客も巻き込んで、ハチャメチャな鬼ごっこが始まる。
 カウンターの中からそれを、笑いながら見ている桜子。
 だがふと、真顔に戻った。


「でも・・・」


 口元に手を当てて、桜子は考え込む。


「彩香とあの子がつるんで仕事だなんて・・・まさか陽介ちゃん、あの件に彩香を使おうとか思ってるのかしら」


 店の中はこの上なく騒がしく、桜子の呟きは誰にも聞こえる事はない。
 しばらくすると、息を切らした彩香がカウンターに戻ってきた。


「あいつら・・・いつか絶対にやっつけてやる」
「あら、ずいぶん元気になったみたいね、彩香」


 さっきまでの心配そうな顔は微塵も見せず、桜子は手早くウイスキーを入れる。


「どこが元気だよ。この店来ると絶対に余計な体力使うな」
「そこがいいっていうお客さんばかりよ、ここは」
「やってられっか」


 彩香はウイスキーを喉に流し込む。


「ねぇ、さっきの話、本当に間違いないのよ」
「さっきの話?」
「ホクロの子よ。思い出すと、いつの間にか現れるの。あの子はそういう子なのよ」


 心なしか真剣に桜子が言うので、彩香もむげには否定出来ない。


「分かった分かった、じゃ、あたしもやってみるとするか」


 もちろん、半分以上は信じてはいない。
 現実的に考えて、そんな事は有り得ない。
 だがこの街は、有り得ない事が当たり前のように起きるというのも、彩香は嫌というほど体感している。
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