TRIGGER!2
思い出したら会える。
考えてみれば、意外と簡単な事なのかも知れない。
「ごちそうさん」
彩香は立ち上がる。
桜子は、そんな彩香に手を振っている。
「気をつけてね」
「あぁ」
軽く手を上げて、彩香は“AGORA”を後にした。
☆ ☆ ☆
マンションの横にある自販機で缶コーヒーを買い、彩香は階段を上がって三階のエントランスを抜けた。
そしてエレベーターに乗り込み、彩香は少し考えてから四階のボタンを押す。
いくら何でも、自分の部屋に全く帰ってこない訳ではないだろう。
どうせ四階の住人と落ち合うまで、仕事は出来ないんだし。
少しくらいなら、待ってもいい。
エレベーターを降りると、廊下には自分達が住んでいる五階のフロアと同じように、ホテルのような赤い絨毯が敷いてあった。
考えてみれば、四階に降りるのは初めてだ。
今までこの階に用事がなかったから。
フロアには、部屋が3つ並んでいる。
だが。
「しまった・・・」
彩香は呟く。
どの部屋に住んでいるのか、分からない。
取り敢えず三部屋とも、ノックをしてみたりドアノブを引っ張ってみたりしたのだが。
「だよな」
腕組みをして、彩香は溜め息をつく。
ドアは当然カギがかかっていたし、誰も出て来ない。
一瞬、管理人の婆さんにここの住人の部屋番号だけでも聞いて来ようかとも思ったのだが・・・深夜にあのババァを起こす勇気は、彩香にはなかった。
もう一度深い溜め息をついて、彩香はエレベーターの横の壁にもたれかかって座る。
これも仕事のうちだと、自分に言い聞かせて。
『思い出すと、いつの間にか現れるの』
桜子が言った言葉が、頭に浮かんだ。
「んなワケあるか」
そう呟いて、彩香は缶コーヒーを飲み干した。
アルコールが入っていない飲み物をわざわざ買ったのは、缶を灰皿変わりに使う為だ。
少しでも灰を床に落とそうものなら、あの管理人の婆さんにどんな目に遭わされるか分かったもんじゃない。
だが、彩香はふと思う。
これじゃあまるで、あのホクロの奴が返ってくるまで粘るつもりみたいじゃないか。
自分は一体何をしているんだろうと自分自身に問い掛けながら、タバコに火を点けて。
考えてみれば、意外と簡単な事なのかも知れない。
「ごちそうさん」
彩香は立ち上がる。
桜子は、そんな彩香に手を振っている。
「気をつけてね」
「あぁ」
軽く手を上げて、彩香は“AGORA”を後にした。
☆ ☆ ☆
マンションの横にある自販機で缶コーヒーを買い、彩香は階段を上がって三階のエントランスを抜けた。
そしてエレベーターに乗り込み、彩香は少し考えてから四階のボタンを押す。
いくら何でも、自分の部屋に全く帰ってこない訳ではないだろう。
どうせ四階の住人と落ち合うまで、仕事は出来ないんだし。
少しくらいなら、待ってもいい。
エレベーターを降りると、廊下には自分達が住んでいる五階のフロアと同じように、ホテルのような赤い絨毯が敷いてあった。
考えてみれば、四階に降りるのは初めてだ。
今までこの階に用事がなかったから。
フロアには、部屋が3つ並んでいる。
だが。
「しまった・・・」
彩香は呟く。
どの部屋に住んでいるのか、分からない。
取り敢えず三部屋とも、ノックをしてみたりドアノブを引っ張ってみたりしたのだが。
「だよな」
腕組みをして、彩香は溜め息をつく。
ドアは当然カギがかかっていたし、誰も出て来ない。
一瞬、管理人の婆さんにここの住人の部屋番号だけでも聞いて来ようかとも思ったのだが・・・深夜にあのババァを起こす勇気は、彩香にはなかった。
もう一度深い溜め息をついて、彩香はエレベーターの横の壁にもたれかかって座る。
これも仕事のうちだと、自分に言い聞かせて。
『思い出すと、いつの間にか現れるの』
桜子が言った言葉が、頭に浮かんだ。
「んなワケあるか」
そう呟いて、彩香は缶コーヒーを飲み干した。
アルコールが入っていない飲み物をわざわざ買ったのは、缶を灰皿変わりに使う為だ。
少しでも灰を床に落とそうものなら、あの管理人の婆さんにどんな目に遭わされるか分かったもんじゃない。
だが、彩香はふと思う。
これじゃあまるで、あのホクロの奴が返ってくるまで粘るつもりみたいじゃないか。
自分は一体何をしているんだろうと自分自身に問い掛けながら、タバコに火を点けて。