TRIGGER!2
 気分はいい。
 なのにそんな質問をぶつけられるなんて。
 心底意外だという感じで、彩香は風間を見つめる。


「へっ? 何で?」
「何となくそう思っただけです。寝起きだから不機嫌そうだったんですね」


 何だよそれ、と、彩香はタバコを取り出して火を点けた。
 自分の中では爽快な朝(昼過ぎだが)だと思っていたのだが、風間にそんな事を言われると何故かムカついてくる。
 図星だから、か。
 確かに、夢見は悪かった。
 思い出したくもない記憶は普段の生活の中で、敢えて意図的に思い出さないようにする事ができる。
 だが、眠っている時にはどうしようもないらしく・・・たまに自分の意思とは無関係に、夢という形で顔を出す。
 もう起きてしまったのだから、その時点で今朝見た夢というものを意図的に思い出さないようにしていたのだが。
 風間にはお見通しだったようだ。
 コイツのそう言う所が、気に入らないのだ。
 憂さ晴らしに嫌味の1つも言ってやろうとベランダの仕切りに顔を向けると、もうそこには風間の姿はなかった。
 隣のベランダにも気配はなく、もって行き場のない少しのイライラを吐き出すように、上に向かって煙を吐き出す。
 いつか絶対に、いつもクールで澄ましたアイツがめっちゃ焦っているところを見て、指差して笑ってやるんだ、と思いながら。


「しっかし、何だよこの暑さ・・・」


 1人ごちて、彩香はビールがぬるくならないうちに一気に飲み干した。
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