TRIGGER!2
 だがその時にはドアが閉まり、車は水島を乗せたまま急発進で立ち去ってしまう。
 腹を押さえながら彩香が何とか一階に降りた時、パトカーが二台、マンションの前に停まった。
 その赤いパトランプに照らされて歩道に横たわっているのは、見慣れたピンクのドレスだった。


「おい!」


 彩香はイチゴに駆け寄る。
 イチゴは力なく笑った。


「大丈夫よ、肩に掠っただけだから」
「何言ってんだ、めっちゃ血が出てるじゃねぇか」


 キウイは自分のドレスでイチゴの肩を押さえ、グレープも、不安そうな表情でその傍に寄り添っている。


「桜子はどうした?」


 彩香は聞いた。


「ママは彩香が帰った少し後に出掛けちゃったのよ。それであたし達が店を掃除してて、帰ろうとしたら急に停電しちゃって・・・」


 キウイが答える。
 周りの建物の電気は点いていたからブレーカーが故障でもしたのかと思い、マンションの裏手に向かっていた所にこの騒ぎに出くわしたのだそうだ。


「いや珍しいなぁ、このマンションで騒ぎとはなぁ」


 不意に、どこかで聞いたことのある声がした。
 振り向くと、そこにはヨレヨレのスーツを着た白髪混じりの年配の男が立っている。
 一瞬だけ、思い出せなかったが。
 彩香がこの街に来て、最初に峯口の店で暴れた時に世話になった人物だ。
 あの時は有無を言わさずに連行されたが。


「三階の踊り場に1人伸びてる。あと救急車」


 彩香はこの街の警察署長、高田にそう声を掛ける。
 高田は後ろに控えていた部下に目配せすると、イチゴの隣にしゃがみ込んだ。


「こりゃまた貴重な体験したなぁ。救急車はもうすぐ着くだろ。ここの管理人の婆さんから通報があったんだよ」
「あら、久しぶりねぇ署長。たまには飲みに来てよぉ」
「こんな時にも営業せんでいいわ。ま、その調子じゃ心配ねぇなぁ」


 程なく救急車が到着して、イチゴは搬送された。
 キウイとグレープも付き添いで同行する。
 そこへ、気絶したままの男を抱えた2人の捜査官が戻ってきた。
 その1人が、拳銃をこっちに見せる。


「署長、この男も銃を所持していました」
「そりゃあ良かったじゃねぇか。これで罪状が増えて、長く拘束出来るしな」


 高田はケラケラと笑い、帽子を脱がされた男の顔を覗き込む。
< 40 / 206 >

この作品をシェア

pagetop