TRIGGER!2
「何だそりゃ? お前んとこの親分の行き着けの店か?」
「覗くんじゃねぇよエロジジイ」


 横からメモ用紙を覗き込む高田を、彩香は睨み付ける。
 もう一本タバコを取り出すと、高田はパトカーに向かって歩き出した。


「どこ行くんだよ?」
「ここにゃ俺の仕事はねぇからなぁ、帰るとするよ」
「あたしから事情聴取するんじゃねぇのか?」
「いくら若いって言ってもなぁ、寝不足はお肌に悪いんだよ。今日のお嬢ちゃんの酷い顔見てたら、これから話聞くってのも可哀想だからなぁ」
「何だとぉ!?」


 怒鳴る彩香に、高田は笑いながら軽く手を振って、パトカーに乗って去って行った。
 ったく、と、彩香は舌打ちをする。
 さっき殴られた左の頬が少し痛んだ。
 その時、ぽんぽん、と肩を叩かれる。
 振り向くと、彩香と同じくらいの年に見える女が、そこに立っていた。


「お前・・・」


 もしかして、と、彩香は女の首もとに視線を送る。
 そこには、薄手のTシャツでも隠せないくらいの大きなホクロがあった。


「・・・遅ェよ」


 深い溜め息と共にそう言うと、女はにっこりと笑顔を作った。
 彩香はメモを女に突き出して。


「あんたが見つけた“ドア”の場所だ。覚えてるか?」


 少しだけメモを覗き込んで、女は頷く。


「確認しに行きたいんだよ。付き合え」


 そう言うと、また頷いて。
 彩香はイライラと言った。


「何だよお前も失声症なのかよ」


 その質問には、女は曖昧に笑うたけで、答えは分からない。
 あー全く面倒くせぇ、と、彩香は頭をかきむしると歩き出す。


「行くぞ」


 女がついて来るのを確認して。
 これでまた、少しは動ける筈だ。
 今ここに居ない連中が何をしているのかは知らないが、せめて、置いて行かれないように。
 何か大きな事が動いているような気がするから。
 それにしても。


「ホント飽きない街だよな、ここは」


 こんな街は、初めてだ。
 何処にいても同じ。
 そんな考えを、根底から払拭してくれる。



 ーーいつから?
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