TRIGGER!2
友香は更にその奥に進んで立ち止まる。
壁一面に吊された衣装に隠れたその場所に、一枚のドアがあった。
「まさかそれ・・・?」
彩香がそう呟くのも気にせずに、友香は邪魔な衣装を少し退けると、そのドアを開けて外に出て行った。
「おい、待てよ!」
慌てて後を追い掛ける。
ドアは店の裏口だったらしく、そこを抜けるともう外だった。
幅が1メートルくらいの、建物と建物の隙間。
あちこちにゴミ箱が置いてあり、あまりキレイな空間ではなかったが。
「あぁ、やっと喋れるわ」
不意に後ろからそんな声が聞こえ、彩香は驚く。
ここにいるのは、自分と友香だけだ。
だがその友香は失声症で、喋れない筈。
そんな彩香を、友香は笑う。
「そんなに驚かなくていいでしょ。世界も変われば、体質だって変わるのよ」
「世界って・・・」
彩香はたった今通り抜けて来たドアを眺める。
「気付かなかった? これ、れっきとした“ドア”よ」
何も考えずに通ってしまったが、“ムスク”や“レッドルビー”のような猛烈な痛みはなかった。
友香が言うように、これが“れっきとしたドア”なら。
ここは、彩香が住むマンションと同じく『固定型のドア』だ。
何も考えずに飛び込んでしまったが、ここが固定型のドアで良かった。
もし『流動型』のドアだったら、全身にあの痛みを感じる所だ。
彩香は身震いする。
「けど何であんたが知ってるんだ? それに、失声症ってのはウソなのかよ」
目の前で腕組みをして立つ友香を、彩香は警戒し始める。
「やめてよ、峯口さんから気をつけろって言われてるのよ。彩香は手が早いからって。私これでもケンカは素人なのよ」
「人をケンカ魔みたいに言うんじゃねぇよ。ちゃんと納得のいく説明すりゃいいんだ」
彩香が言うと、友香はうーんと唸る。
「説明するのはいいけど、納得するかは微妙よね」
「とにかく答えろ」
「分かりましたよ。でも、もうすぐ夜が明けるわ。マンションまで歩きながら話さない?」
やっぱり、この女は『あっちの世界』の事を知っている。
彩香の住むマンションに、その世界を行き来できるドアがあるという事も。
「行きましょうよ、彩香ちゃん」
歩き出した友香に、彩香もしぶしぶついて行くーー。
壁一面に吊された衣装に隠れたその場所に、一枚のドアがあった。
「まさかそれ・・・?」
彩香がそう呟くのも気にせずに、友香は邪魔な衣装を少し退けると、そのドアを開けて外に出て行った。
「おい、待てよ!」
慌てて後を追い掛ける。
ドアは店の裏口だったらしく、そこを抜けるともう外だった。
幅が1メートルくらいの、建物と建物の隙間。
あちこちにゴミ箱が置いてあり、あまりキレイな空間ではなかったが。
「あぁ、やっと喋れるわ」
不意に後ろからそんな声が聞こえ、彩香は驚く。
ここにいるのは、自分と友香だけだ。
だがその友香は失声症で、喋れない筈。
そんな彩香を、友香は笑う。
「そんなに驚かなくていいでしょ。世界も変われば、体質だって変わるのよ」
「世界って・・・」
彩香はたった今通り抜けて来たドアを眺める。
「気付かなかった? これ、れっきとした“ドア”よ」
何も考えずに通ってしまったが、“ムスク”や“レッドルビー”のような猛烈な痛みはなかった。
友香が言うように、これが“れっきとしたドア”なら。
ここは、彩香が住むマンションと同じく『固定型のドア』だ。
何も考えずに飛び込んでしまったが、ここが固定型のドアで良かった。
もし『流動型』のドアだったら、全身にあの痛みを感じる所だ。
彩香は身震いする。
「けど何であんたが知ってるんだ? それに、失声症ってのはウソなのかよ」
目の前で腕組みをして立つ友香を、彩香は警戒し始める。
「やめてよ、峯口さんから気をつけろって言われてるのよ。彩香は手が早いからって。私これでもケンカは素人なのよ」
「人をケンカ魔みたいに言うんじゃねぇよ。ちゃんと納得のいく説明すりゃいいんだ」
彩香が言うと、友香はうーんと唸る。
「説明するのはいいけど、納得するかは微妙よね」
「とにかく答えろ」
「分かりましたよ。でも、もうすぐ夜が明けるわ。マンションまで歩きながら話さない?」
やっぱり、この女は『あっちの世界』の事を知っている。
彩香の住むマンションに、その世界を行き来できるドアがあるという事も。
「行きましょうよ、彩香ちゃん」
歩き出した友香に、彩香もしぶしぶついて行くーー。