TRIGGER!2
「やっぱり、ここには長居出来ないわね・・・」


 体質的に合わない。
 だが、ここに来れば言葉が伝えらる。
 彩香の現実世界では、何も伝える事が出来ないのにーー。


「どうしてそんな事になってんだよ?」


 友香を支えてマンションの非常階段を登りながら、彩香は言った。


「これも過去のしがらみよね・・・でもあたしは、少しも嫌だとは思ってない」
「・・・変なヤツ」


 そうまでしてこの女は、彩香に美和を助けろと伝えたかったのか。
 それがどうしてなのかを、友香に聞ける状態ではなかった。
 その身体は震え、顔色は真っ青だ。
 どうしてこんな事になってるのか全く理解出来ずに、彩香は取り敢えずさっき聞かれた事を答える。


「ドアに違和感がなかったのは“スターダスト”だけだ」
「・・・そう」
「で、あそこはどうすりゃいいんだ?」
「そこは峯口さんが決めるでしょ」
「何だよそれ」


 この状態で階段を登るのは、至難の業だったが。
 そんな会話をしているうちに屋上にたどり着き、彩香は友香を促した。


「ほら、さっさと入れよ」
「ありがと。ねぇ、彩香ちゃん」


 何だよ、と彩香は言う。


「自分の過去は自分だけのものだけど、他人がそれを踏みにじっちゃダメなのよ。そんな事、絶対に許しちゃいけない」
「まぁ、な」


 それは、彩香もそう思った。
 だから素直に、友香の言葉を肯定する。


「だけど、あんたの頼みを聞いてやるかは別の話だ」
「・・・ふふっ」


 何を思ったのか、友香は力なく笑みを浮かべて。
 ドアを抜けてマンションに入り、しばらく座り込んで息を整えていたが、ようやく立ち上がる友香。


『帰るね』


 そうジェスチャーして。
 しっしっ、と彩香が手をひらひらさせると、友香はエレベーターに乗って帰って行った。


「ったく・・・」


 もうとっくに太陽は登りきっている。
 とにかく、この一晩だけでも色々な事があった。
 体力も、もう限界に近かった。
 取り敢えず、自分の部屋に戻って休もう。
 そう思い、彩香はエレベーターのボタンを押すーー。
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