TRIGGER!2
「いいじゃんか隼人、ちょうどうちらの真ん中の部屋なんだし。この時間ここに来れば、ちょうどいいツマミもあるし」
「ツマミじゃありません、ちゃんとした夕食のおかずですよ」
「いい加減そのかたっ苦しい敬語やめろよ。ジョージには普通に話すクセにさぁ」


 言いながら彩香もタバコに火を点けた。
 ますます風間の眉間のシワが深くなる。
 どうしてこの2人は、毎晩のようにこの時間になると自分の部屋にやってきて、自分の為に作った夕食のおかずだけをチマチマ食べながら缶ビールを飲むのだろうか。
 かろうじて缶ビールだけは、各自持参してはいるのだが。
 いやそういう問題じゃなく。


「ウチは居酒屋じゃないんです。いくら下の“AGORA”がまだ開店してないからといって、晩酌がてらここにツマミを探しに来るのは止めて下さい」
「どーでもいいけどさ」


 どーでも良くありません、と彩香にツッコミを入れようとしたのだが、彩香があまりにも真剣な顔でこっちを見つめるものだから、つい、何事かと風間も彩香を見つめ返す。


「隼人ってさ」


 ただならぬ雰囲気に、ジョージも彩香を見つめた。
 心持ち腰を浮かせて、彩香は風間の方に身体を寄せる。
 全く先の読めないこの行動に、思わずゴクリと喉を鳴らすジョージと風間。


「なぁんで仕事が休みなのにヘアスタイル決まってるんだ?」


 至極真面目にそう聞かれて。


「・・・朝起きたら身だしなみを整えるのは普通じゃないんですか」
「ぶわっはっはっは!!」


 風間が質問にバカ正直に答えた途端、ジョージが隣で大笑いする。
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