TRIGGER!2
「だよな! だよな! これでスーツでも着てたら、今にも出勤しそうなサラリーマンだもんなぁ!」
「だろ? 昼間見た時からなんか違和感あると思ってたんだけどさ、今分かったよ。今日は土曜日で会社が休みなのに、いつも通り早起きしていつも通りガッチガチに頭固めてるんだもん。おかしいよ絶対」
「おかしくありません!」


 我慢しきれずに言い返すと、輪をかけてジョージが腹を抱えて笑い出す。


「やっ・・・やめてくれ、そのガチな漫才は」


 最後にはヒーヒー言いながら、涙をこらえている始末。


「面白すぎだろ、お前ら。つか隼人、もっと見たいから一緒に“AGORA”行かねぇか? 漫才の見物料に奢ってやるよ」
「断る」


 仏頂面で夕食の続きを食べ始める風間。


「なんでだよ隼人、明日も休みなんだろ? たまには行こうぜ、今日はボトル争奪戦なんだよ」


 食い下がる彩香にも、風間は目をやらずに。


「明日は少し仕事がありますので。もし仕事がなくても、断りますが」
「仕事?」


 彩香は聞き返す。


「あたし聞いてないよ。明日会社休みなんだから、『あっち』での仕事なんだろ?」


 『あっち』とは、峯口建設が所有するこのマンションの屋上から出た場所から行ける、もう一つの世界の事だ。
 こっちの世界とは違う、裏の世界に生きる者の中でもほんの一握りの人間しか知らない、無法地帯。
 非合法的な取り引きが常に横行し、ならず者達にとってはパラダイスだ。
 そんな世界で『何でも屋』みたいな仕事をしている風間とジョージ、彩香はクライアントからの依頼があれば動く。
 とは言え、この前のクラブ“パシフィック”の一件が終わってから、一旦手を引くと言ったボスーー峯口建設の社長・峯口陽介ーーの言葉通り、社長秘書も兼ねている風間を除いて、これといった仕事がないというのが現状だった。


「ほんの30分もあれば終わる仕事ですから。いつ起きるか分からないあなた方2人より、自分で行った方が合理的です」
「もしかして『確認』か?」


 飲み終わったビールの缶を潰しながら、ジョージが言った。
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