TRIGGER！２
「なぁ、ジョージ」


　額に手をかざしたまま、彩香は聞いた。
　ジョージは彩香を見つめる。


「なんだ？」
「あたしは、どうすればいい？」


　質問の意図が掴めないのか、ジョージは不思議そうな視線をこっちに向けた。


「何がだよ」
「お前らの過去に、あたしが関わっていいのか？」


　本気で分からなかった。
　今まで、関わった相手に過去があるという当たり前の事も、考えた事がなかった。
　自分にとって不必要な人間は排除してきたし、そんな人間が今までにどんな人生を送ってきたかなんて、どうでも良かった。


「俺なら、関わって欲しくないね」


　新しいタバコに火をつけながら、ジョージは言う。
　だよな、と彩香は頷いた。
　彩香自身、自分の過去には誰にも触れて欲しくない。
　むしろ、過去なんてキレイさっぱり消えて無くなればいいとすら思っている。
　だからジョージが言う事には、納得出来た。
　彩香は立ち上がる。


「どこ行くんだ？」


　ジョージは聞いた。
　彩香はジョージを見下ろして。


「帰るんだよ。何だか頭痛いし」


　そう言う彩香に、ジョージは何かを納得したように、両手をパチンと合わせた。


「あーなるほど。そう言う事か」
「何がだよ」
「ウチのタヌキオヤジだよ。どうしてここまで俺達に彩香を関わらせたいのか、今分かった」


　どうでもいい、と、彩香はまた歩き出す。
　ジョージはそんな彩香を追い掛けて、肩に手を回す。
　彩香はその手を振り払おうとして、身体をよじらせた。


「止めろ。馴れ馴れしいんだよ」
「初めて、なんだろ？」


　いきなりこんな事を言い出したジョージを、嫌悪感丸出しで彩香は睨む。


「こんなに他人の過去に踏み入ろうとしたのは初めてだ。そうだろ、彩香」


　眉間にシワを寄せたままこっちを見上げている彩香に、でもな、とジョージは屈託のない笑顔を向けた。
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