TRIGGER!2
☆ ☆ ☆
目を開けると、天井の蛍光灯が眩しかった。
ゆっくりと視線を動かすと、至って事務的なコンクリートの打ちっぱなしの壁と、並んだロッカーが目に入る。
その隣の壁には大きな鏡が建てつけてあり、色々な化粧品が並んでいた。
だが思考はまだ動いてはおらず、頭の中は真っ白だ。
だから、自分の頬に手を当てて心配そうに覗き込むこの男が誰なのか、一瞬思い出せなかった。
「あんたもーー血の匂いがする」
そう呟くと、男の手が微かに強張った。
「・・・彩香」
呼ばれているのが自分だと分かって、彩香は虚ろな目で峯口の顔を見つめた。
「彩香?」
目の前の峯口に聞こえるか聞こえないかの、小さな声で。
「誰、それ」
「・・・・・!?」
峯口の顔つきが険しくなる。
だがそこで、彩香はようやく起き上がった。
目をゴシゴシとこすって背筋を伸ばすと、さっきよりも幾分か、気分が良くなっている。
「あれ? ここは?」
「“AYA”のスタッフルームだよ、彩香」
彩香が寝かされていたのはベンチ型の長椅子で、峯口は彩香の隣に座ると、テーブルの上に置いてあったウイスキーのグラスを口に運んだ。
「ジョージはどこ行った?」
「まぁそう心配すんな、ジョージにちょいとお使いを頼んだんだよ。だが出て行ったのはほんの五分前だ。もちろん、お前の具合次第で合流してもらうが・・・気分はどうだ、彩香?」
「あぁ、大丈夫だ」
「なら良かった。なぁ彩香」
峯口は、タバコに火をつけながらこっちを見た。
「俺の手、血が付いてたか?」
「ん?」
彩香が聞き返すと、峯口は自分の両手を鼻先に近付けてクンクンと匂いを嗅いだ。
「おっかしいなぁ、ちゃんと石鹸付けて洗ったんだけどなぁ」
「何だよ、殺人でもやらかしたのか?」
「いや、そうじゃねぇよ。さっき高田の爺さんとこにいたのは、千絵ちゃんを誘拐した一味の男と、ちょいと話をしてたからさ」
彩香が気絶させた、あの時の男か。
血の匂いが付いているかどうか気にするという事は、峯口の言う『話』というのが穏やかなものではなかったという事を物語っている。
彩香もタバコを取り出して。
「んで、奴から何か情報は引き出せたのか?」
「そうだな。だからお使い頼んだんだよ」
「だったら早く教えろよ」
目を開けると、天井の蛍光灯が眩しかった。
ゆっくりと視線を動かすと、至って事務的なコンクリートの打ちっぱなしの壁と、並んだロッカーが目に入る。
その隣の壁には大きな鏡が建てつけてあり、色々な化粧品が並んでいた。
だが思考はまだ動いてはおらず、頭の中は真っ白だ。
だから、自分の頬に手を当てて心配そうに覗き込むこの男が誰なのか、一瞬思い出せなかった。
「あんたもーー血の匂いがする」
そう呟くと、男の手が微かに強張った。
「・・・彩香」
呼ばれているのが自分だと分かって、彩香は虚ろな目で峯口の顔を見つめた。
「彩香?」
目の前の峯口に聞こえるか聞こえないかの、小さな声で。
「誰、それ」
「・・・・・!?」
峯口の顔つきが険しくなる。
だがそこで、彩香はようやく起き上がった。
目をゴシゴシとこすって背筋を伸ばすと、さっきよりも幾分か、気分が良くなっている。
「あれ? ここは?」
「“AYA”のスタッフルームだよ、彩香」
彩香が寝かされていたのはベンチ型の長椅子で、峯口は彩香の隣に座ると、テーブルの上に置いてあったウイスキーのグラスを口に運んだ。
「ジョージはどこ行った?」
「まぁそう心配すんな、ジョージにちょいとお使いを頼んだんだよ。だが出て行ったのはほんの五分前だ。もちろん、お前の具合次第で合流してもらうが・・・気分はどうだ、彩香?」
「あぁ、大丈夫だ」
「なら良かった。なぁ彩香」
峯口は、タバコに火をつけながらこっちを見た。
「俺の手、血が付いてたか?」
「ん?」
彩香が聞き返すと、峯口は自分の両手を鼻先に近付けてクンクンと匂いを嗅いだ。
「おっかしいなぁ、ちゃんと石鹸付けて洗ったんだけどなぁ」
「何だよ、殺人でもやらかしたのか?」
「いや、そうじゃねぇよ。さっき高田の爺さんとこにいたのは、千絵ちゃんを誘拐した一味の男と、ちょいと話をしてたからさ」
彩香が気絶させた、あの時の男か。
血の匂いが付いているかどうか気にするという事は、峯口の言う『話』というのが穏やかなものではなかったという事を物語っている。
彩香もタバコを取り出して。
「んで、奴から何か情報は引き出せたのか?」
「そうだな。だからお使い頼んだんだよ」
「だったら早く教えろよ」