TRIGGER!2
 そうだな、と、峯口はタバコを灰皿に押し付けた。


「港の近くに、割と最近出来た建物があるんだが、知ってるか?」


 彩香は首を傾げる。
 ここから車で15分ほど行ったところにある港は知っているが、そこに新しく出来た建物は知らない。


「港に行けばすぐに分かる筈だ。プレハブの安っぽい建物だが、黒い壁だから目立つ」
「黒いったって今、真夜中だけど」
「・・・あ」
「あ、じゃねぇよ」
「ま、まぁとにかく、港の手前の海側にある建物だ。行けばきっと分かる」


 疑いの眼差しで、彩香は峯口を見つめる。
 峯口は苦笑して。


「お前がやっつけた男が言うには、千絵ちゃんはそこで雇用主に引き渡されたらしい」


 と、言うことは。
 マンションで誘拐事件が起きてから丸2日経っているのだ、さすがに今も水島千絵が同じ場所にいるとは思えないが、何らかの証拠がないとは言い切れない。
 だがあの男が口を割ったのはそこまでで、それ以上の質問は高田に止められたのだという。
 その時には実質、男はもう口も聞けない状態だったらしいが。
 彩香はふと、疑問を口にする。


「雇用主ってことは・・・やっぱあの連中、ただの雇われ人だったって事か」
「そうだな。全国区で動いている犯罪請け負い組織ってのがある。依頼されれば、どんな事でもやるってな」
「・・・・・」


 彩香は何かを言いかけて、止めた。
 その時、峯口の携帯が鳴る。
 峯口はその場で通話ボタンを押して。


「もしもし? あぁ雛ちゃん・・・あぁ、分かった。って、その助言頼んでないだろ? え? いや五万って・・・ちょ、ちょっと待っ・・・!」


 峯口は、呆然と携帯を見つめる。


「・・・切られた」


 そんなやり取りを見て、彩香はニヤリと笑う。


「ぼったくられたか?」


 肩を落とす峯口に、そう声をかける。
 うん、と力なく頷く峯口。
< 81 / 206 >

この作品をシェア

pagetop