TRIGGER!2
「雛ちゃんがな、迷ったら右、だそうだ。いや助言は有り難いんだけどな、頼んでないのに五万とか・・・」


 ぼったくられた上に、意味まで分からない。
 ふと、あのぼったくり占い師が峯口の義理の妹だという事を思い出す彩香。
 そう言えば、峯口の奥さんを見たことがない。
 ジョージは名前を母親の姓で名乗ってると言うから、離婚でもしたのか。


「んで、ホントに大丈夫なんだな?」


 峯口が念を押すと、彩香は立ち上がって笑う。


「大丈夫だよ。つか、港に行くのはいいけど、足がねェ」
「だよな。ジョージは俺の車使って行っちまったし・・・あ、秋田が確か単車で来てたな。俺はもうちょいここでやらなきゃならん事があるし・・・」


 乗れるか? という視線に、彩香は頷いて。
 部屋の内線で峯口は秋田を呼び、ふうっと煙を吐き出した。


「さすが彩香ちゃん、何でも出来るんだなぁ」
「からかうんじゃねぇよ。しっかし、このスタッフルームもうちょい何とかならねぇの?」


 この繁華街で一番の高級クラブは、外装だけでなく内装も超一級だ。
 そんな店のスタッフルームが、まるで色気のないスーパーの事務室みたいな雰囲気だなんて、ここで働くスタッフが可哀想だ。
 彩香はイタズラっぽい笑顔を、峯口に向ける。


「変な所でケチってんだな、天下の峯口建設の社長さんは」
「変な言い掛かりつけんなよ。当然この部屋も俺好みの、フロアにも負けねぇくらいに豪華にしようとしたんだよ。そしたら秋田が、これでいいって」


 噂をすれば、スタッフルームのドアが開いて秋田が部屋に入ってきた。


「俺がどうかしましたか?」
「こんな商売の従業員はお客に満足させるのが仕事、そして俺は従業員を満足させるのが仕事だっつう話だ」


 は? と首を傾げる秋田。
 彩香は苦笑する。


「秋田、悪いが彩香に単車貸してやってくれねぇか」
「・・・・・」
「何だよその嫌そうな顔は」


 あからさまに拒否している秋田の顔を、彩香は睨み付ける。


「社長の頼みなら断りませんが・・・彩香さん、ぜぇったいに壊さないで下さいね?」
「さぁ、それはどうかな」


 秋田が渋々差し出した鍵を、半ば奪うようにもぎ取りながら彩香はニヤリと笑う。
 反対に、半べそ状態の秋田。
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