TRIGGER!2
「!?」


 ギョッとして振り向くと、そこには子供が立っている。
 彩香の腰位までの身長しかない、黒いズボンとシャツを着た小学生くらいの男の子だ。
 可愛らしい顔立ちをしているが、その表情は笑ってはいなかった。
 こんな真夜中の暗闇に、黒ずくめの格好で立っている子供。
 半袖のシャツから覗く両手と顔だけが、微妙に浮かび上がって。
 一瞬、幽霊かと思ったが。


「・・・お前かよ」


 首もとのホクロを見て、彩香はほっと息を吐いた。
 男の子は彩香の手を取って引っ張っている。
 何か、嫌な予感がするが。


「分かった、行くからそう引っ張るなよ」


 男の子は彩香と手を繋いだまま、歩き出す。
 着いていくと、海とは反対の、建物の裏側に回った。
 そこには1つだけ、ドアがある。
 男の子はそのドアの前に立ち、こっちを見上げていた。


「ここから入れるのか?」


 彩香は一歩進んで、裏口のドアに手を掛け。
 少しだけ、眉をひそめた。
 ドアの取っ手が壊されている。


「ジョージか?」


 彩香を待たずに、ジョージは中に入ったのだろうか。
 だがどうせこの建物が何なのか確かめたかったところだ。
 彩香は、壊れたドアを開けた。
 その途端、男の子は彩香に思い切り体当たりを食らわせる。


「なっ・・・・・!?」


 前のめりになりながら、彩香はドアの内側に倒れ込むようにして転がる。


「いっ・・・てェ!!!?」


 信じられない痛みだった。
 『流動型』のドア。
 機械でミンチにされているような痛みが、全身を駆け巡った。


「何すんだテメェぇぇぇ!!」


 振り返って叫ぶが、そこには男の子の姿はない。
 慌てて男の子をとっ捕まえようとして、思い直して踏みとどまる。
 ここで戻っても、またあの痛みを味わう羽目になる。


「あんの野郎~・・・!」


 ギリギリと奥歯を噛み締めて、彩香はドアの外を睨んだ。
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