TRIGGER!2
 稼働してはいないが、それぞれに何か白いものが付着していた。
 それだけでもう、ここが何なのか、大体想像がつく。
 そして、次の部屋には細かく仕切られた引き出しがいつくも付いた棚が壁一面に並んでいた。
 彩香はその中の1つを開けて、中の物を取り出した。
 それは、錠剤だ。
 ここは、薬の製造工場なのだ。
 あっちとこっちの世界では人間は行き来できても、物質はお互いの世界に持ち込む事はできない。
 だからこの薬は、現実世界の方で造られ、保管されているものだ。


「大当たり、だな」


 彩香はそう呟いて後ろのポケットからタバコを取り出して火を点ける。
 騒音に耳を澄ますと、左側の奥から、ここより少しずつ遠ざかっているような気がした。
 まぁジョージなら何とかなるかと思うが。
 ゆっくりと煙を吐き出して、彩香はふと気付く。
 何せ部屋が複雑にずれているから、よくは見えないが。
 直進した何部屋か向こう側に、明かりが漏れている。
 彩香はタバコをくわえたまま、ゆっくりとその明かりの方へ歩き出す。
 電気が点いた部屋の前まで来ると、一旦壁際に身を寄せて、チラリと部屋の中を覗く。


「・・・・・」


 思わず二度見してしまいそうになるのをグッとこらえて、彩香は腕組みをして考え込んだ。
 そして、今度はさっきよりも長い時間、明かりが点いた部屋の中を見て。
 彩香は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「おい、ヤブ医者」


 見間違いではないのを確認してから、彩香は部屋に入って、中にいる人物にそう声をかける。
 部屋中を埋め尽くすかのような膨大な紙の山の中心で、ヤブ医者と呼ばれた人物はこっちを見上げる。


「あら!」


 髪の毛をきっちりと肩で切りそろえ、赤い縁取りの眼鏡をかけて、彼女は彩香に笑顔を向けた。
 そこにいたのは、水島千絵だ。
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