TRIGGER!2
 それが、マズかった。


「・・・げっ」
「あ、ごめぇん、この部屋使ってたぁ?」


 顔を強ばらせる彩香と対照的に、部屋にいる男2人に笑いながら話し掛ける水島。
 だが相手はそんな雰囲気に呑まれるワケでもなく。
 即座に、銃口をこっちに向けた。
 こいつらも、黒ずくめの服を着ている。
 ーーヤバい、と思った瞬間。
 男たちは引き金を引いた。


「!!」


 水島を後ろに庇い、一瞬目を閉じて。


「・・・・?」


 だが、すぐに目を開けた彩香の視界には、黒ずくめの男2人が部屋の床に倒れ込む瞬間が映っていた。
 そして、その男たちが倒れたい向こうに立っていたのは。


「隼人!」


 風間はゆっくりと、硝煙の残る銃を下ろす。


「注意散漫ですね、彩香さん。ここは敵の陣営のド真ん中ですよ」


 深いため息と共に、風間は言った。
 今まで何をしてたか知らないが、その態度に、彩香はムカつく。


「何で隼人がここにいるんだよ! それに今まで何してたんだ!!」


 怒鳴るが、風間はそれには答えずに銃をしまうと、背中を向けて。


「出口くらいちゃんと覚えていて下さい。こっちです」
「お前なぁぁぁっ!!」
「あのぉ・・・悪いんだけどぉ・・・」


 彩香が風間に食ってかかろうとしたとき、水島がおずおずと口を開いた。


「わたしの研究室って、どこか分かりますか?」
「そこから逃げて来たんだろうが、たった今っっ!!」
「無事で良かったです、先生。研究室はさっき無くなったんですよ。新しいのを用意してますのでこちらへ」
「ホント!?」


 やったぁ、と喜んで、水島は風間の元へ走り寄る。
 プルプルと拳を震わせて、彩香はそんな様子を見ていたが。
 風間は彩香に笑いかける。


「でも、先生を見つけてくれたのは助かりました。私も今ここに来たばかりだったので」


 多少追っ手は片付けましたが、と風間は続ける。
 だが彩香は、首を傾げた。


「ーー今っつったか?」
「はい、たった今ですよ」


 言いながらも、風間は彩香が言いたい事に気が付いたらしい。
 表情を引き締めて、建物の奥を見つめて。


「彩香さん」
「何だよ」
「向こうがやたらと騒々しいんですが」


 しかも、さっきよりも音が近い。
 くわえて、どんどんこっちに向かっているような気がする。
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