TRIGGER!2
☆  ☆  ☆



「・・・へぇ・・・」
「へぇ、じゃねぇよ」


 次の日。
 予想に反して、彩香は8時5分前に風間の部屋をノックした。
 もしかしたら今日あたり、雪が降るのかも知れない。


「そうくるとは思いませんでした。仕方ありません、行きましょうか」
「お、おう・・・」


 フラフラとついて来る彩香と一緒にエレベーターに乗ると、風間は顔をしかめる。


「酒臭いですよ、彩香さん」
「やかましい、さっきまで飲んでたんだよ」


 つまり、寝てないと言うことだ。
 起きられない彩香にとっては苦肉の策なのだろうが、今日の仕事は本当につまらないものだ。
 そんなに意地になってまで付いてこなくてもいいのだが。


「ボトル争奪戦はどうでした?」


 エレベーターが上昇する間、ぐったりと壁に寄りかかっている彩香に訪ねる。
 彩香は力なく親指を立てて。


「もっちろん、取ったぜ。最高級ウイスキー」
「・・・その様子じゃ、せっかく獲得したウイスキーも一晩で飲み干したんじゃないですか?」
「何で分かるんだよ!?」


 本当に分かりやすい。
 風間がため息をついた時、軽い振動と共にエレベーターは屋上に到着した。
 このドアを抜ければ、『あっちの世界』に行くことが出来る。


「少しはシャキッとして下さい、彩香さん。超簡単な用事とは言え、あっちは何が起こるか分からないんですよ」


 マンション屋上に続くドアを開けながら、風間は言った。
 分かってるよ、と彩香は大きなあくびをする。
 2人はドアを抜け、非常階段を降り始めた。


「そろそろ教えてくれよ、何しに行くのか」
「昨日ジョージが言っていた通り、『確認』です」
「何を確認しに行くんだ?」
「四階の人が先日、新しい“ドア”を見つけたそうです。だからそのドアを確認に」


 マンションを降りきり、風間はそのまま歩き出す。
 四階の人と言うのは、こっちとあっちの世界を繋ぐ場所・・・通称“ドア”を見つける事が出来る、変装の名人だ。
 だがそれは変装の域を遥かに越えており、性別・体型・身長まで変えられる。
 あれはもう変身だと、いつかジョージが言っていたが。
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