TRIGGER!2
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そろそろ夜も明けようとしていた。
マンションに戻った彩香は水島と一緒に六階に降りる。
相変わらず色々な医療器具や電子機器が乱雑に並んでいるフロアだ。
「さぁて、仕事仕事」
水島は何事もなかったようにパソコンの前に座ると、何やら作業を始める。
彩香は軽くため息をついて、フロアの一番奥にある小さな生活スペースに向かい、冷蔵庫に入っていたビールを取り出した。
こっちは一応恩人なのだ、黙って貰った所で文句はないだろう。
この女の何が、こんな研究に没頭させているのか分からないが。
こんな、くだらない、研究に。
「・・・1つ、聞くけど」
彩香が訪ねても、水島はパソコンのキーボードを叩くのに夢中で何もいわない。
それでも構わずに、彩香は続ける。
「あんたが開発した薬ってのは、継続して飲まないと効果が無くなるのか?」
「そうねぇ。薬の成分の容量にもよるんだけど、今使っているのはごく軽い効果のものよ。効果は、持って2ヶ月くらいかしらねぇ」
無意識のうちに彩香は、パソコンに集中している水島の背後に近づいていた。
水島に何をしようとしているのか、自覚はない。
ただ、友香が言った言葉が脳裏をよぎった。
『過去は自分だけのもの。他人がそれを踏みにじる事なんて、絶対にしちゃいけないのよ』
そうだ。
こんな薬で、人間の記憶を消すなんて。
絶対に許しちゃならないのだ。
考えてみたら、全ての元凶はコイツじゃないのか。
この女さえ居なければ、美和や風間、そしてジョージが、峯口が苦しむ事もなかった筈だ。
そして自分もーー。
ゴクリと喉を鳴らし、彩香は、後ろからその首にゆっくりと手を伸ばす。
「あ、そう言えば」
いきなり水島は彩香に声を掛けた。
ビクリとして、彩香は伸ばしかけた手を引っ込める。
今、自分は一体何をしようとしていたんだ?
この女は一応、峯口が抱えている、いわゆる身内なのに。
まさか、仲間である人間に手をかけようとしていたのか?
「頭が痛いって言ってたわよねぇ。はいこれ、頭痛薬」
屈託のない笑顔を彩香に向けて、水島はカプセルをこっちに差し出した。
彩香はそのカプセルを受け取ろうとして、慌てて手を引っ込める。
「いらねぇよ。あんたが作った薬なんて」
そう言う彩香に、水島は立ち上がって無理やりカプセルを握らせた。
「わたしはこう見えて、人間の身体の事は知り尽くしているわ。だからあなた」
彩香の手を握ったまま、水島は眼鏡の奥から真っ直ぐにこっちを見つめて。
その瞳は真剣であり、何故か威圧感があった。
彩香は思わず、しり込みしてしまう。
「飲んでおいて間違いないわよ」
「・・・・・!!」
彩香は水島の手を振り払う。
水島はそんな彩香を見てクスッと笑うとまたパソコンに向き直り、キーボードを打ち始めた。
そろそろ夜も明けようとしていた。
マンションに戻った彩香は水島と一緒に六階に降りる。
相変わらず色々な医療器具や電子機器が乱雑に並んでいるフロアだ。
「さぁて、仕事仕事」
水島は何事もなかったようにパソコンの前に座ると、何やら作業を始める。
彩香は軽くため息をついて、フロアの一番奥にある小さな生活スペースに向かい、冷蔵庫に入っていたビールを取り出した。
こっちは一応恩人なのだ、黙って貰った所で文句はないだろう。
この女の何が、こんな研究に没頭させているのか分からないが。
こんな、くだらない、研究に。
「・・・1つ、聞くけど」
彩香が訪ねても、水島はパソコンのキーボードを叩くのに夢中で何もいわない。
それでも構わずに、彩香は続ける。
「あんたが開発した薬ってのは、継続して飲まないと効果が無くなるのか?」
「そうねぇ。薬の成分の容量にもよるんだけど、今使っているのはごく軽い効果のものよ。効果は、持って2ヶ月くらいかしらねぇ」
無意識のうちに彩香は、パソコンに集中している水島の背後に近づいていた。
水島に何をしようとしているのか、自覚はない。
ただ、友香が言った言葉が脳裏をよぎった。
『過去は自分だけのもの。他人がそれを踏みにじる事なんて、絶対にしちゃいけないのよ』
そうだ。
こんな薬で、人間の記憶を消すなんて。
絶対に許しちゃならないのだ。
考えてみたら、全ての元凶はコイツじゃないのか。
この女さえ居なければ、美和や風間、そしてジョージが、峯口が苦しむ事もなかった筈だ。
そして自分もーー。
ゴクリと喉を鳴らし、彩香は、後ろからその首にゆっくりと手を伸ばす。
「あ、そう言えば」
いきなり水島は彩香に声を掛けた。
ビクリとして、彩香は伸ばしかけた手を引っ込める。
今、自分は一体何をしようとしていたんだ?
この女は一応、峯口が抱えている、いわゆる身内なのに。
まさか、仲間である人間に手をかけようとしていたのか?
「頭が痛いって言ってたわよねぇ。はいこれ、頭痛薬」
屈託のない笑顔を彩香に向けて、水島はカプセルをこっちに差し出した。
彩香はそのカプセルを受け取ろうとして、慌てて手を引っ込める。
「いらねぇよ。あんたが作った薬なんて」
そう言う彩香に、水島は立ち上がって無理やりカプセルを握らせた。
「わたしはこう見えて、人間の身体の事は知り尽くしているわ。だからあなた」
彩香の手を握ったまま、水島は眼鏡の奥から真っ直ぐにこっちを見つめて。
その瞳は真剣であり、何故か威圧感があった。
彩香は思わず、しり込みしてしまう。
「飲んでおいて間違いないわよ」
「・・・・・!!」
彩香は水島の手を振り払う。
水島はそんな彩香を見てクスッと笑うとまたパソコンに向き直り、キーボードを打ち始めた。