TRIGGER!2
彩香はそんな水島から目をそらすと、ビールを持ったまま六階のフロアを後にして、屋上に出る。
ドアを抜けて屋上の手すりにもたれかかり、白んできた空を見上げながらビールを一口飲んだ。
「自分の中の空洞に気付いたか?」
いきなり、そう声を掛けられた。
振り向くと、そこには安曇雛子が立っている。
あからさまに嫌な顔をして、彩香は雛子から目をそらすと、また景色を見上げた。
「何なんだよ」
「最初に会った時に言った筈だ。お前の中は空洞だ、と」
それは覚えている。
初対面からいきなり意味不明な言葉を投げかけられ、不快だった事も。
彩香はそんな雛子を無視して、タバコを取り出して。
「気付いたのだろう、自分の中の空洞に」
「うるせぇな!!」
再度問われて、たまらずに彩香は振り返って怒鳴る。
その拍子に、くわえていたタバコが落ちた。
「何もかも見透かしたような顔しやがって! 隼人もジョージもあんたの娘絡みの事件で動いてるんだよ! 訳の分からん助言なんていらねぇから、この件解決してみろよ、その外れない占いとやらでなぁ!!」
一気にまくし立てる彩香の言葉を、雛子はただじっと見つめながら聞いていた。
そして、息を荒げてこっちを睨む彩香から、そっと目をそらして。
「思い入れの強い人間に、占いは効かない。特に身内には、な」
そう言う雛子の表情は、ヴェールに隠れていても分かるくらいに悲痛に満ちていた。
彩香は少しだけ息をのんで、また雛子に背を向ける。
それが出来ていたら、もうとっくにこの事件は解決しているのだ。
雛子の占いは、外れないのだから。
このインチキ占い師もきっと、娘である美和の事で苦しい想いをしているのだろう。
「あの時・・・最初にお前に会った時、こうも言った筈だ。『だがそれは、お前自身が気付いていないだけだ。本当に空洞なのかどうかを』とな」
静かに、雛子は言う。
彩香は、それには答えなかった。
「気付く事を恐れるな。気持ちは分かる」
「あんたにあたしの気持ちが分かるかよ」
言葉とは裏腹に、図星を言い当てられた気分だった。
雛子の言うとおり、彩香は、気付く事を恐れている。
いや、もうとっくに気付いているのかも知れない。
それを認めるのは正直言って怖かった。
今の彩香が、壊れてしまうそうで。
ドアを抜けて屋上の手すりにもたれかかり、白んできた空を見上げながらビールを一口飲んだ。
「自分の中の空洞に気付いたか?」
いきなり、そう声を掛けられた。
振り向くと、そこには安曇雛子が立っている。
あからさまに嫌な顔をして、彩香は雛子から目をそらすと、また景色を見上げた。
「何なんだよ」
「最初に会った時に言った筈だ。お前の中は空洞だ、と」
それは覚えている。
初対面からいきなり意味不明な言葉を投げかけられ、不快だった事も。
彩香はそんな雛子を無視して、タバコを取り出して。
「気付いたのだろう、自分の中の空洞に」
「うるせぇな!!」
再度問われて、たまらずに彩香は振り返って怒鳴る。
その拍子に、くわえていたタバコが落ちた。
「何もかも見透かしたような顔しやがって! 隼人もジョージもあんたの娘絡みの事件で動いてるんだよ! 訳の分からん助言なんていらねぇから、この件解決してみろよ、その外れない占いとやらでなぁ!!」
一気にまくし立てる彩香の言葉を、雛子はただじっと見つめながら聞いていた。
そして、息を荒げてこっちを睨む彩香から、そっと目をそらして。
「思い入れの強い人間に、占いは効かない。特に身内には、な」
そう言う雛子の表情は、ヴェールに隠れていても分かるくらいに悲痛に満ちていた。
彩香は少しだけ息をのんで、また雛子に背を向ける。
それが出来ていたら、もうとっくにこの事件は解決しているのだ。
雛子の占いは、外れないのだから。
このインチキ占い師もきっと、娘である美和の事で苦しい想いをしているのだろう。
「あの時・・・最初にお前に会った時、こうも言った筈だ。『だがそれは、お前自身が気付いていないだけだ。本当に空洞なのかどうかを』とな」
静かに、雛子は言う。
彩香は、それには答えなかった。
「気付く事を恐れるな。気持ちは分かる」
「あんたにあたしの気持ちが分かるかよ」
言葉とは裏腹に、図星を言い当てられた気分だった。
雛子の言うとおり、彩香は、気付く事を恐れている。
いや、もうとっくに気付いているのかも知れない。
それを認めるのは正直言って怖かった。
今の彩香が、壊れてしまうそうで。