ハッピー☆ラッキー



あなた達が知っているのはごく一部。


わたしの頭の中には自分でもわからないくらい攻撃パターンが詰まっている。


「お互い様よ、わたしだってあなた達の攻撃パターンなんてお見通しなんだから」


そう言い放つと彼女達から笑みが消えた。


北相のサーブが続く。


相手のスパイクを美帆が拾い、ライトの亜子に向かってトスを上げるふりをしてバックトス。


レフトの千尋に打たせるも、リベロに拾われた。


激しいラリーの応酬に客席がしんと静まり返った。


セッターは将棋やチェスのように何手も先まで読んでプレーしなければならない。


読みが外れ、すぐに次の作戦を考え直すことはいつものこと、瞬時の判断を要求される。


だから余裕なんて全くない。


だけど、常に心がけていることはアタッカーが気持ちよく打てるトスを上げること。


転んでも、


ベンチに突っ込んでも、


最高のトスを上げる。


大変である反面、やりがいでもある。



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