ハッピー☆ラッキー



「それは、違うわ。謝るのはわたしよ」


秋元先輩がわたし達のところに近づいてくると、


「わたし、あなたが羨ましかった。

バレーの才能に恵まれ、純粋で優しいあなたに嫉妬していたの。

正セッターを1年だったあなたに奪われたからって、わたしもどうかしていたわ。

キャプテンなのに部員を煽ってあなたを孤立させて、無関係なあなたのお兄さんまで巻き込んでしまった。

ごめんなさい。一番悪いのはわたし、みんなは悪くないの。だからこうなって当然なのよ」


先輩はマスクを外し、笑ってみせた。


無残に折れた前歯に、胸が痛む。


「先輩、うちのお父さんが歯科医なのは知ってますよね?

お父さん、大学病院の先生が匙を投げた患者の歯だって治しちゃうんです。

きっと先輩の歯だって治してくれます。だからうちの歯科医院に来てください、お願いします」



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