ハッピー☆ラッキー



「証拠ならここにある!」


幸坂さんは、最新型のスマホを取り出した。


それは、お父さんがよく観ていた時代劇で格さんが印籠を出すシーンに似て、


お奉行様が桜吹雪の入れ墨を下手人達に見せるシーンにも似ていて、


「これに一部始終を撮らせてもらったよ。さぁ、次の駅で降りて警察に行きましょうか?」


凍りついてしまいそうなくらい冷たい表情の幸坂さんに、被害者のわたしでも思わず「お見逸れしました!」と、ひれ伏してしまいそうになる。


「わかった……」


観念したのか、うなだれるおじさん。


「遅刻になっちゃうけど、キミも一緒に……あれ?」


わたしに気づいた幸坂さんが目を見開いた。


「は、はい……お、おはよう、ございます」


ははは……。


もう笑うっきゃない……。



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