ハッピー☆ラッキー



千尋の家は駅前で紅茶専門店を開いている。


カフェチェーン店が乱立する中、厳選されたこだわりの茶葉を使ったクオリティーの高い紅茶と紅茶にベストマッチのスコーンやサンドイッチを盛り込んだアフタヌーンティーセットはもちろん、スイーツも人気が高く、リピーターがあとを絶たない。


昨年、千尋が張り切ってスイーツを作ってはくれた。


けれど、リキュールの入れすぎでわたしと亜子は出来上がってしまい、夏休みで帰省中のお兄ちゃんに車で迎えに来てもらったという決して甘くない記憶がある。


「あれはおいしかったけど、もう酔っ払うのは嫌だからね」


亜子がグサリと釘を刺すと、千尋は慌てて、


「大丈夫ですってば!今年はわたしが作る時間がなくてお母さんにお願いして最高のスイーツをご用意しましたのでご安心ください」


ホッ……


良かった。


「了解、放課後楽しみにしているよ」


校門を通り抜け、昇降口でふたりと別れた。



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