ハッピー☆ラッキー



やましいことは何もないのに、見てはいけないものを見てしまったような気がして咄嗟に塀の陰に隠れた。


喧嘩しているというよりもじゃれているように見えるふたりに、胸の奥でチクン!と痛みが走った。


いつもと違うケイくんを見たような気がした。


表情も言葉遣いも……


これが本当のケイくん。


わたしの前では爽やか好青年なのに、


彼女はいないなんて言っていたくせに……


冷静になって考えてみればわかることじゃない。


バカね、ナナ。


その言葉を真に受けたわたしがバカなのよ。


美男美女でお似合いのカップル。


「嘘つき……」


わたしの出る幕なんてどこにもない。


彼女がいると知ったからにはもう一緒に行くことはできないね。


朝の登校は今日でおしまい。


明日からはまたひとりに戻るだけ。


でも、いい夢見させていただきました。


「さよなら……」


次第に遠くなるケイくんの背中にそっと別れを告げた。



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