王子様と堕姫様
「何のご用でしょうか。」
突き跳ねるように言葉を漏らす。
「髪を下した姿は
完全にリナリア姫だね。」
「今結び直します。」
私はこの王子から自分の名前が
発せられるのがとても嫌だった。
私が戸を閉めようとすると、
王子は無理矢理中に入り
私を見てきた。
髪を結う私の手を止め、
私を引き寄せる。
「君は僕の生きる意味だ。」
震える声で王子は言った。
「貴方は私の生きる意味ではありません。」
噛み合わない言葉。
噛み合わない二人。