王子様と堕姫様
そんなある日のこと、
街の人々がとある話をしているのを耳にした。
『とうとう、
あの国の王は疫病にかかったらしいわよ。
そんな王もシオン様が永遠の眠りにつかせたって話も。』
噂はすぐに広まった。
あの国が私の国であることもすぐに分かった。
私は今以上に自分の身元隠しに
神経を走らせた。
国がなくなった以上、
私は姫でも何でもない。
ただのリナリア・アネモーネだというのに。
私はこの国では”リア”と名乗ることにしている。
長い髪もぶっきらぼうに一つに束ねて
オヒメサマらしい要素は
どこにも見えないようにした。
大事な人がいなくなった以上
私が今生きる意味はなくなったのだ。
そう、その時決心した、
”シオン様を殺して自分も死ぬ”と。
迎えに来てくれない事はわかっている。
だったら自分が行けばいいのだ。
ただそれだけの話。