王子様と堕姫様
Ⅲ
消えた使用人
屋敷の中からリアが消えた。
それは大きな問題だった。
なぜなら、リアは王子の婚約者であったからだ。
まだ極少数の人しか知らない事実であっても
屋敷内はバタバタしていた。
「どうしよ…私があんなこと…!!」
「いや、僕が何も話していなかったのが悪いんだ…」
エリカが泣き続け、
なんとも言えない空気が広がる。
「いいから探しに行くぞ…!!」
ルイが大きな声で言う。
「この雨だ、まだ遠くへは行けない。」
『マリア様がお帰りになるぞ!!』
別の使用人の声が聞こえる。
今の王子にとってなにより大切なのは
リアの存在であるのは確かだった。
しかし礼儀として、
この国の王子として
やるべきことはしなければならないことがあるのも事実であった。
「見送ったらすぐに向かう。」
三人はそれぞれの道で、
リアを探しに向かった。
「ほんと…オヒメサマだな…」
こう言った王子の顔には
重苦しく焦った表情が大きく表れていた。